【4】ダーウィン理論の正体 『私たちを「洞窟」の奥底に』

 進化論が人類文明、私たちのものの考え方にどのように影響しているかを俯瞰的に見てみたいと思います。「俯瞰的に」というのは難しい言葉ですが、最初から細かな話をするのではなく、全体のポイントや問題を大づかみするということです。

 では、前回の最後にお知らせしたように、プラトンの「洞窟の比喩」から話を始めます。

 古代ギリシャの哲学者ソクラテスの弟子プラトン(紀元前427年―紀元前347年)は著書『国家』第7巻の中で私たちの生きている世界と本当の世界を「洞窟の比喩」を通して表現していますが、こんな内容です。

 地下深く続く洞窟の奥底で囚人は手足を縛られて奥の壁の方に向けられて座らされている。洞窟の手前では衝立(ついたて)のような低い壁があり、その後ろでは火をともして影絵を洞窟の奥の壁面に映し出している。手足を縛られた囚人はその影絵を見ながら、本当の世界だと信じて生きている。洞窟を出たところには太陽が燦燦と降り注ぐ素晴らしい世界がある。

洞窟の比喩

洞窟の比喩(NHK Eテレ「100分で名著」放送時の図を元に作成)

 プラトンはこの洞窟の中にいる囚人こそ私たち人間の現実の姿であると描いてみせてくれたわけです。これはまさに進化論が支配する世界をよく表現していると思いませんか?

洞窟の囚人は進化論に支配された人類

 前述したように、進化論のポイントは「生存闘争」「人間の起源は下等動物、究極的には物質」「人間は偶然の産物」です。「神は妄想」などと繰り返し主張して、道徳・宗教の価値を地に落とすことによって、私たちの命と愛の根源を探す内的な努力への道を遮り、愛なき非情な生存闘争つまり弱肉強食の世界へと人類を追い込んでいるのです。

 洞窟の奥底では進化論の主張に疑うものは少なく、みんな自分が生き残ろうと、有利に生きようと必死になっているのです。

 ですから、ID理論の学者は進化論を人類文明に入った毒だと表現しているほどです。この毒は私たちの心にどう影響しているのでしょうか?

 私たちの心は、人を尊重し愛したいという本心(利他的な善の心)もありますが、人を嫌ったり、低く見るような邪心(自己中心的な悪の心)もあります。仏教でいう百八つの煩悩です。

 そして、私たちの文明には、進化論的価値観が根付いています。進化論のメッセージが私たちの生活を支配しており、例えば、テレビ、インターネット、教科書を含む出版物あるいは周囲の人によって送り続けられているわけです。

 生存闘争に生き残る、自己中心で生きるということが科学的にお墨付きを与えられた文化の中で生きているのです。

 結論の一部を述べれば、神あるいはグレートクリエーターとも呼ばれる存在は私たち一人ひとりをとてつもなく愛しているということです。138億年間、「私」を喜ばせ、感動させるために、地球、青空、夕焼け、新緑も食べ物もすべてを準備してきたのですから。その宇宙的な壮大な愛で成長して、今度はその感動的な愛で満たされた心で他の人を愛していくというのが、本来の人間の生き方なのだと思います。

「神の愛を呼吸できない」状態

 「愛のために生きる」ことの価値、素晴らしさはイエス・キリストをはじめとする聖人の記録だけでなく、自分が犠牲になっても他の人の命を救ったという方の感動的な例から私たちは学んでいます。

 20年前、JR新大久保駅で日本人カメラマンと共に韓国人留学生の李秀賢(イ・スヒョン)さんがホームに転落した男性を助けようとして電車にはねられ亡くなりました。その勇気を日韓の国境を越えて称え合い映画化もされました。

 日本では東日本大震災のとき、防災無線で住民に避難を呼び掛け続け、津波の犠牲になった宮城県南三陸町職員遠藤未希さん(24)の話を思い出します。自分のことよりも皆のことを心配したこの女性の心、犠牲の愛に多くの人が胸を打たれました。(参考: http://memory.ever.jp/tsunami/higeki_bosai-tyosya_miki.html

 韓国では客船セウォル号沈没事故で、若い女性乗務員パク・ チヨンさん(22)が最後まで船に残って学生たちの避難を助け続け命を落とすということがありました。この女性の勇気と自己犠牲の愛に世界は感動したのです。

 しかし、現実には、人類は総じて洞窟の奥底に押し込められ、愛の乏しい生存闘争の世界に押し込められています。進化論という虚像を見せられながら、愛という価値を忘れ、自己中心、優越感、嫉妬などの「煩悩」の虜になって生きるように仕向けられているのが現実の姿なのです。

 同コラム2回目でも言及しましたが、2020年5月、アメリカで白人警官の膝に押さえつけられて、ジョージ・フロイドさんは「息ができない」と何度も訴える中で亡くなりました。

 「息ができない」というのは、私たちの文明の本質を象徴的に示しているのではないでしょうか。私たち人類は進化論の支配下で、「神の愛が呼吸できない」ようにされているということだと思います。 次回から進化論がいかに間違った理論であることを一つずつ確認していきます。