【10】科学的検証-生命の起源⑤ 『熱水噴出孔も各元素も「すべては偶然じゃない」』
これまで熱水噴出孔における化学進化説を彼らのシナリオに沿って検証してきました。化学進化というのは偶然による積み重ねの過程であり、最初から絶望的な聳(そび)え立つハードルに阻まれており、行き詰まりであることを確認しました。
では、本当に納得のいく、合理的な説明はどんなものになるでしょうか?
筆者が今考えているものを記していきたいと思いますが、その前に生命起源研究の現状から確認していきます。
現在、科学者たちは、地球に最初に現れた単細胞生物は、超好熱メタン菌だと推定しています。数百度という環境で生存しており、水素や二酸化炭素を食べてメタンや酢酸をつくり排出します。
46億年前に地球が誕生して地表付近もドロドロに溶けて熱い状態から冷えて、海や陸という環境が整っていきますが、地球大気は酸素が少なかったと言われています。ですから、最初に現れたのは、今、地球にあふれている酸素を呼吸する好気性細菌ではなく、酸素を必要としない嫌気性細菌の1つ、超好熱メタン菌だと考えているわけです。
最初の生命も精巧な情報システム
ゲノムサイズは166万塩基対。420万から470万塩基対の大腸菌に比べると小さいですが、大事なことは、高温環境でも代謝し、自己複製することができる「情報システム」を持っているということです。
超好熱メタン菌のDNAには1700余ものタンパク質のアミノ酸配列を決める情報つまり遺伝子の情報が書かれています。水素と二酸化炭素を吸って、メタンや酢酸をつくる代謝反応も、複数の酵素タンパク質が関係していて、遺伝子が必要なタイミングでオンになります。遺伝子がオンなると、コピーのmRNAに基づいてアミノ酸が順番に組み立てられて、酵素タンパク質になるなど、精巧な制御が行われているのです。
ちなみに、DNA → RNAへのコピー → タンパク質への翻訳というのはセントラルドグマと言われ、細菌から人間までの共通のシステムですが、最初の生命では、それが革新的に最初に現れたということになります。
アミノ酸もDNA、RNA、膜をつくる脂質分子もすべて超好熱メタン菌を機能させ生きさせ、繁殖させるための目的のために存在し働いています。部品、中間部品などすべてが精巧に組み合わさって機能する有機体なのです。実際、最初の生命が超好熱メタン菌でなかったとしても、代謝と自己複製のために精巧に組み合わさって機能する有機体です。
毎日お世話になっている有機体と言えば、スマホですが、スマホはアプリを動かすための情報と機械部分を動かすための情報が必要であり、これら全部の設計情報が準備されてそのスマホが機能し、生産が可能です。
スマホの設計情報が人間の知性の賜物であることがわかるように、情報の起源は偶然ではなく、少なくとも知性であることを経験的に知っています。ですから、インテリジェント・デザインを提唱している科学者は最初の生命を、知的存在あるいは知的デザイナーが設計図を描き、その情報に基づいて創造したと推定するとしています。ですが、私たちGCODEは山中伸弥先生ら偉大な科学者たちと同様に、臆することなく神と呼びます。グレート・クリエーターやサムシング・グレートと控えめに呼ぶこともできますが、それは単に偉大な創造者という意味になってしまうからです。あとのほうで述べていきますが、この存在の本質は知性だけではない人格的「神」あるいは「神様」という伝統的な呼び名が最もふさわしいと思います。
では、最初の生命はどのように創造されたのでしょうか。
それを紐解くのにまず考えておく必要があるのは、熱水噴出孔を形成している水、水素、二酸化炭素や金属化合物を形成する元素の起源と、地球上に熱水噴出孔がなぜ存在するようになったか、です。
進化論者たちの立場は偶然の積み重ねです。
例えば、多宇宙論というのがあります。ビッグバンの前には、親宇宙から子宇宙、さらに孫宇宙と増えていき、無限の宇宙が生まれたが、その中の1つが私たちの宇宙だと説明します。無限にあるので、その中に今の生命を育むことができる宇宙が偶然に生まれたというのです。生命に必要な物質も偶然ということになります。
しかし、親宇宙が子宇宙を生んだなどという理論は根拠がなく、説得力はありません。世界的に人気を博している韓国の音楽グループBTS(防弾少年団)のヒット曲DNAの歌詞に「すべては偶然じゃない」とありますが、まさにそうなのです。
私たちの宇宙には物理法則があります。例えば、アインシュタインの有名な式E=MC2。これには光速Cという物理定数が含まれています。ニュートンが導いた万有引力の法則F=GMm/r2。これには重力定数Gが含まれています。
物理法則には必ず物理定数があり、30以上あります。しかも、この定数がちょうどいいところに設定されているのです。例えば、Gが少しでも小さければ、重力が小さくなり、宇宙はスカスカになってしまいます。反対にGが少しでも大きければGが大きすぎてビッグバン後に物質がすべて集まり自壊するというのです。30以上ある物理定数がちょうどいい数値に設定されている、そんな物理法則がビッグバンの前に設定されているわけです。このような物理法則がきちんとセットされていること自体が神の計画を意味しているのではないでしょうか。
元素ができていく過程は次のように考えられています。宇宙誕生から38万年後に水素とヘリウムだけが生まれ、約3億年後、恒星ができてくると、恒星の中で水素、ヘリウムを元にして核融合が進み、炭素、酸素、窒素から鉄までの元素が生成。それ以上に重い元素は超新星爆発の巨大なエネルギーの中で合成されたと考えられています。
92億年を経て地球が登場してきますが、その間、地球のために多数の条件が重なるように準備されたことは段階的に創造されてきたことを示しています。多数の条件の一部を具体的に見ていきましょう。
超新星爆発が繰り返され、銀河や恒星がどんどん生まれてきますが、太陽系および地球は宇宙の特別な位置に生まれてきます。
つまり、銀河系内の生命適合ゾーンに太陽系が創られ、太陽系内の生命適合ゾーンに地球が創られることよって地球は物質に富み、特に水を豊富に含む星となっているのです。
これは銀河系の図ですが、太陽系は緑色で描いたドーナツ状のハビタブルゾーン内にあります。このゾーンより内側なら中心部のブラックホールに近くなり危険。外側なら物質密度が小さくなり、生命にとって必要な元素が十分集まらないような場所になります。
太陽系のハビタブルゾーンはこの図のライトブルーで示されたところです。
太陽を中心に金星、地球、火星が周っていますが、金星は地表温度が400度台、火星は逆に平均表面温度-63度です。 地球と太陽の距離が現在の85%になるほど金星側に近づけば海の水はすべて蒸発してしまうといい、地球と太陽の距離が今の1・2倍以上になり、火星側に近づけば海は全部凍り付いてしまうそうです。地球がちょうどよいハビタブルゾーンを回っているので、豊富な水、多種類の金属も保持できる星になっているのです。
さらに生命を育める星になるために地球に多数の条件が折り重なっているのです。
例えば、大きな月。地球が誕生した直後に小惑星が地球に激突し、その破片が集まって月ができた説が有力ですが、大きな月のおかげで自転軸が安定し、地球に温暖な気候をもたらしています。また月の重力によって潮の満ち引きだけでなく、地球規模の流れとして深層海流をもたらしています。
そのほか、■隕石群から地球を守ってくれている大きな惑星である木星、土星 ■宇宙線から地球を守ってくれている地磁気 ■可視光線と少しの紫外線、赤外線だけが地表に届くようにしている大気 ■豊富な水とマグマ・火山による熱水活動によって多くの金属が地球表面に現れるようになっているなどです。
ですから、神による約100億年の段階的な創造活動によって、地球の海底に熱水噴出孔という特別な場所が準備されたとみることができます。
再度、元素の話に戻りますが、熱水噴出孔において生命の誕生に用いられるのは、水、二酸化炭素、窒素分子、触媒の働きをする各種金属、岩石などです。
これらの物質を構成する元素はどこで設計されたのでしょうか?ビッグバン以降は宇宙の形成に向けて膨張していくわけですから、設計図はすべてビッグバン前にセットされていたとしか考えられません。
水分子は水素原子2個と酸素原子1個からなっていますが、まず水の性質について考えましょう。水は私たちの体の60~65%ですが、水がそれほど必要なのは多数の生体内化学反応が水の中で円滑に進むからです。
氷が浮くというのも重要です。氷が水に沈むようになっていれば、沿岸の海の底に氷がたまり、溶けにくいですからどんどんたまって、海の主要な場所で生命が住めない場所になってしまいます。従って、氷が水に浮くという性質は、生命が地球に繁栄する上で最重要な性質の1つです。
私たちはさまざまな地球の自然の風景に感動しますが、水なしでは現れることができなかったはずです。あの壮大なグランド・キャニオンも水の浸食作用という性質によって長い時間をかけてできてきたものです。
人間は喜びと感動を与える水の設計図、水素原子2個と酸素原子1個が結合して水分子になるという設計図はビッグバンの前に設計されていたということです。
では、熱水噴出孔に関係する化合物について考えてみましょう。まず水素。水素分子は超マフィック岩という岩と熱水が接して発生します。超マフィック岩とは、世界大百科事典第2版では次のように定義されています。
マフィック(鉄,マグネシウム(苦)に富む)鉱物を約70%以上含む岩石。
熱水が鉄やマグネシウムを含む超マフィック岩と接すると水素を発生するという性質は、偶然の積み重ねで存在するのではなく、元をたどれば宇宙創成前に設計されていたのです。
次にアミノ酸の材料になる一酸化炭素。熱水とともに噴出する二酸化炭素がチムニーに沈殿している硫化カドミウムを触媒として一酸化炭素が生成する道筋が解明されていますが、そのような化学反応が進行するように、炭素、酸素、カドミウム、硫黄などすべての構成元素の設計図が宇宙創成前にきちっとつくられていたということになります。
ここまでの話を結論づければ、すべての元素は宇宙創成前に設計され、科学者が注目している熱水噴出孔と最初の生命創造に関係する化合物群も段階的創造の1つの結実として存在しているということです。
韓国の音楽グループBTSの世界的にヒットしたDNAの「すべては偶然じゃない」という歌詞がものの本質を見事に言い当てていることに改めて驚きを感じざるを得ません。
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