ラクダ② 神様の砂漠の民への贈り物

ラクダは昔から人間との関わりが深く、砂漠で生活する人々が「神様からの贈り物」と呼んでいるほど、多くの恩恵を受けています。また「砂漠の船」とも呼ばれて、交易で他の使役動物では越えることのできない乾燥地域ではほぼ唯一の輸送手段となっていました。

ウマよりも頑丈で太い骨格をしているので、100kg以上もの荷物を背負い長距離を歩けます。常に時速5kmほどで歩き続けられるし、短い距離ならば時速40~60 kmで走ることもできるのです。

ラクダは飲まず食わずで大丈夫!!

ラクダの主食は植物ですが、植物の少ない場所でも生きていけるようにトゲのあるサボテンやひからびた植物も食べることができます。それはラクダの口の中がとても硬くなっているからです。サボテンのトゲもすりつぶして飲み込み水分を補給できるし、食べ物が少ない砂漠でも食べ物を得ることができるようになっているのです。

サボテンを食べるラクダ
サボテンを食べるラクダ(引用:デイリィ・ニュウス・エィジェンシィ

ラクダは、数日間ほとんどエサを食べなくても生活できるうえ、乾燥した炎天下の灼熱の砂漠でも、まったく水を飲まずに2週間も生き延びることができます。そういうとコブに水を貯めているからと考えるかもしれませんが、そうではありません。

他の多くの哺乳動物は体重の12~14%の水分を失うと生きられないのですが、ラクダは体重の30%の水分が失われても生きることができます。それはごくわずかの水で生きられ、水を飲める場所に来たらすぐに失った水分を補給できる能力をもっているからなのです。

ラクダは一度に体重の4分の1の重さの水を平均80リットル、最高で136リットルも飲むことができます。それもたった数分で飲み干してしまうのです。飲みすぎではないかと思ってしまいますが、これは失った水分を取り戻しているだけなのです。

ペットボトルの水を飲むラクダ
ペットボトルの水を飲むラクダ(引用:ログミーBusiness

ラクダのこぶはスゴイ能力

ラクダの平熱は約37℃ですが、体温は34~40℃程度まで、外気温に合わせて変化させることができます。水を補給しにくい環境の時は、環境に自分の体温を合わせることで、外気温と体温の差を減らして体内の水分を逃がさないようにしているのです。

人間を含め多くの哺乳類は、体温を下げるために汗をかきますが、この時に大量の水分を消耗します。ラクダは40℃になっても体温を下げる必要がないため汗の量を抑えることができ、水分の損失を小さくすることができます。42℃に達するまで汗をかかず、体内の水分を減らさないようにしています。

ラクダは、気温が50℃を超えるような砂漠でも、人や物をのせて長い旅を続けることができます。
そのひみつが、背中にあるチャームポイントのコブ。2つのコブには、合計100kg近い脂肪がたくわえられており、これをエネルギーにかえることで、1か月くらい食べなくても生きていけるのです。また、熱い太陽の光が体に当たるのをふせいだり、体温を調節したりする役割もあります。
しかし、コブの中身がつかわれると、水をやり忘れた花のようにしおれてしまいます。
「続々ざんねんないきもの事典(高橋書店)」P67

ラクダは飲まず食わずで過酷な砂漠生活が出来ると紹介しましたが、それには背中のコブが大きな役割を果たしています。

こぶの中には良質な脂肪が詰まっていて、そこに大量のカロリーを蓄えるため、コブが満杯の状態であれば食料なしでも長期間生きられます。ラクダがコブの中の脂肪を使い果たすと、しぼんだ風船のように皮がたるんでコブは倒れてしまいます。

こぶが倒れているフタコブラクダ
こぶが倒れているフタコブラクダ(引用:大阪LOVER ブログ
ラクダといえば、背中にある大きな「コブ」がトレードマーク。これは脂肪でできていて、水や食べ物がないときには、分解して水とエネルギーに変えることができます。さらに、強い日差しをさえぎって、体温が上がるのもふせげるため、コブのおかげで暑い砂漠でも長時間歩き続けられるのです。
さて、人間の場合、太るとおなかが出てきがちです。ラクダはというとコブに脂肪が集まるため、太ると背中が大盛りのかき氷のように高く厚みを増していきます
「続ざんねんないきもの事典(高橋書店)」P91

こぶの働きはそれだけではありません。断熱材効果もあって照り付ける太陽の熱を体に通さないようにしています。コブだけに脂肪を貯めることで体の他の部分からは体内の熱を放出しやすくしているのです。

砂漠は日中と夜間の寒暖差がとても激しく、日中の平均気温が30℃を超えていても夜間には氷点下まで冷え込むこともあります。そのため、ラクダは暑い昼にはコブに熱を吸収して貯め込み、気温の下がった寒い夜には貯めてあった熱を放出して活用しています。

ラクダの水分維持機能とは?

ラクダの持っているスゴイ能力とは、体内に持っている水分を維持する機能です。ラクダは体にある水分を維持するためにとてもたくさんの戦略を持っています。普通の動物は、尿素が体内にたまると死んでしまいますが、ラクダは独特の肝臓機能、腎臓機能を持って排せつしています。

まずラクダの腎臓と長い腸は節水能力に長けており、排せつで失われる水分を最小限に抑えることができます。腎臓は体内の水分から毒素を効率的に排除することができます。尿をろ過してリサイクルしているので、尿の濃度は血液の10倍とかなりの高濃度になります。それによって尿として排出する水分はごく少量で済みます。

また、体内の水分量が減るとラクダは胃の大きさを小さくして食事量を減らします。その結果、排せつするフンの量は少なくなります。また水分の少ない乾燥した状態のフンにして節水しています。

さらに、呼吸するたびに鼻で呼気の湿気を回収するなどして、徹底して水を節約できる体になっています。そのため、極めて長期にわたる乾燥に耐えることができるのです。

しかし、ラクダが持っている最もスゴイ能力は、これらの脱水症状への耐性でも瞬時の補水力でもありません。それは、驚くべき血液の性能なのです。

この血液については次回に紹介したいと思います。


<引用資料>

● ログミーBusinessウィキペディア
 『ラクダが水なしでも長時間生きていけるのは“背中のコブのおかげ”ではない』
 https://logmi.jp/knowledge_culture/culture/323104

● 天王寺動物園「なきごえ Vol.43-05 2007.05」
 『ラクダのこぶ』
 https://www.tennojizoo.jp/nakigoe/2007/05/keep.html

● ウィキペディア
 『ラクダ』
 https://ja.wikipedia.org/wiki/ラクダ

● BIOME「いきものブログ」
 『ラクダはラクだ?』
 https://biome.co.jp/biome_blog_185/

● GIGAZINE
 『ラクダのコブに貯蔵されているのは「水」ではない、ラクダが過酷な砂漠での暮らしに耐えるメカニズムとは?』
 https://gigazine.net/news/20201114-camels-humps/

●デイリィ・ニュウス・エィジェンシィ「世界のびっくりニュース」
 『鋭い巨大なトゲを物ともせず実にうまそうにサボテンを食べるラクダの食事風景が凄い』
 https://dailynewsagency.com/2018/05/25/camels-vs-cactus-ids/