ラクダ③ 極限環境で生き残る能力
乾燥した砂漠地帯で生きていくためにはたくさんの水を必要とします。そのためラクダは一度に100リットルもの大量の水分を飲み、体内に蓄えているのです。ラクダが飲んだ水は血液に吸収され貯蔵されるのでラクダの体は大量の水分を含んだ血液が循環しているわけです。
ラクダ以外の哺乳類は、これほど大量の水を飲み血液中の水分が多くなると、その水が赤血球に浸透し、その圧力で赤血球が破裂してしまいます。しかし、ラクダの赤血球は水分を吸収して2倍に膨れ上がっても破裂しないのです。
驚くべきラクダの血液の性能
激しい動きをしなければ、10日以上も水なしで生きていけるラクダの秘密は実は特殊な血液にあるのです。
普通の血液は水分が不足すると濃くなって、血液中の成分同士がくっついてしまいます。しかしラクダの血液は、水分が減って血流が悪くなっても、まったくどろどろになりません。濃度が高くならず成分も凝固しないのです。それはラクダの血液がもつ特異な流体特性によります。これは水分を維持するためにラクダが持つ特殊能力の一つです。
これについて具体的に見ていきましょう。まず赤血球の形です。哺乳類の赤血球は核がなくて丸い形をしています。それに対して鳥類や爬虫類の赤血球は核があり楕円形をしています。では哺乳類であるラクダの赤血球はどうでしょうか?なんとラクダだけは核がない楕円形をしているのです。
水分が不足すると血液量が減少するため、適切な血圧を保つために血管は細くなります。しかしラクダの赤血球は小さい楕円形なので、狭い場所でもすり抜けられます。そのため体の40%の水分を失っても、わずかの水分で生き延びられるのです。
ラクダの持つ特別な消化器
ラクダは1日に40kgもの食べ物を摂取できるし、食べ物なしで何日も生きていくことができます。ラクダは植物しか食べない草食性の動物ですが、他の動物には消化できない植物でも食べられる能力があるのです。たとえば、砂漠に多いトゲのある植物のトゲを唇と舌を使って取り除き、葉を食べてタンパク質を摂り水分を抽出できます。

ラクダは砂漠地帯でよく見られるアカシアの木が大好物ですが、これにはトゲがありますし、他にもソルトブッシュなどの低木もトゲがあります。またトゲだらけのサボテンには、肉と実の両方に水分がたくさん含まれていますが、繊維質も多くて消化が困難です。それを消化できるようにラクダは独特の消化器官を持っています。
ラクダには4つの胃袋がありますが、第3の胃と第4の胃の区別がないため3つとも言われています。第1胃が大きく、その中に飲んだ水をたくさん蓄えられます。しかし、胃の中でずっとキープするわけではなく、前述のようにラクダは血液中にたくさんの水分を蓄えています。
ラクダは一度飲み込んだ食べ物を胃から口の中に戻し、再び噛んでまた飲み込む反芻(はんすう)をしますが、そのときには下顎を左右に動かしています。ラクダは食べ物を吐き戻して再咀嚼(さいそしゃく)することでサボテンの硬い繊維を分解してゆっくり消化し、多くの栄養と水分を抽出しているのです。
ラクダの口はどうなってるの?
ラクダの唇はすごく柔らかくゴムのように厚くて、とてもぷるぷるしています。口先が柔らかく器用に動くようになっているので、唇を伸ばして自由自在に小さいものをつまむこともできます。上唇はよく見るとウサギのように左右に分かれていてよく動き、食べ物をつかむときには唇の筋肉に力を入れて固くすることで、しっかりとつかめるのです。サボテンをつかんでトゲに触れずに引き抜くこともできるのです。


ラクダの口の中には「頑丈な歯」と「弾力性にとんだ無数のヒダ」があります。この「弾力性にとんだ無数のヒダ」とは口腔乳頭(こうくうにゅうとう)という円錐形の突起で、食べ物を一方向に整えるように作用します。ラクダによっては、この乳頭が、ほほの内側や舌にもある種もいます。
ラクダは15cmものトゲがあるサボテンを食べるために、この口腔乳頭を使っています。口腔乳頭が舌や口の筋肉と一緒になってトゲを一方向に向けて、食べ物を胃の中に入れるように働くのです。こうして、トゲのあるサボテンもうまく胃へと運ばれていくようになります。
ラクダの乳頭はケラチンという物質でできていて、触るとあまり硬くなくプラスチックに近い質感をしています。口腔乳頭で、ほほの内側や口の中を擦り傷や切り傷から守っているので、ラクダは怪我をすることなくサボテンを食べることができるのです。とはいっても、トゲによって傷つけられる可能性はゼロではありません。それでもラクダは肉厚のサボテンを食べられるなら、不快感や痛みを我慢できるようです。
びっくり!!これが求愛なの?
ラクダの口の中には丈夫な内膜と口蓋(こうがい)があって、植物のトゲから守ってくれます。口の上側奥にある口蓋は、通常はサボテンなどの固いものを固定するために利用するので硬くなっていて、上の口蓋に食べ物を押しつけ歯ですりつぶしているのです。いわば「すり鉢とすりこぎのような仕組み」で、サボテンを回転させながら噛むことで圧力を分散させ、すりつぶされたとげを口腔乳頭が喉へとまっすぐに流し込みます。こうして、とげが刺さらないようのみ込んでいるのです。
ラクダにとって口蓋はとても重要な器官です。もし口蓋が傷ついてしまったら、呼吸がしづらくなったり食べ物が食べられなくなったりして、死んでしまうこともあるくらいです。
オスは成熟してくると男性ホルモンのテストステロンの濃度が高まって口蓋が発達します。すると口蓋が伸び縮みするようになってきます。ラクダのオスは発情期やケンカなど、興奮したときに口から白い泡とピンクの内臓のようなものを吐き出すことがあります。実はこれが内臓ではなく喉の奥にある口蓋なのです。

オスは口蓋を風船のようにふくらませベロ~ンと口から出しますが、これは求愛行動で、メスに対してアピールしているのです。口蓋だけでなく、臭い白い泡をたくさん出すほどモテるそうです。オスに対して口蓋を口から出して見せるときは相手を威嚇するためで、戦いを始める合図になります。攻撃の対象はもちろん相手の口蓋です。ラクダのオスにとって一番大切な器官であり、相手に誇示すべきもの、それが口蓋なのです。
<引用資料>
● ログミーBusinessウィキペディア
『ラクダが水なしでも長時間生きていけるのは“背中のコブのおかげ”ではない』
https://logmi.jp/knowledge_culture/culture/323104
● Quora
『ラクダがサボテンを無害に食べられるのはなぜ?』
https://jp.quora.com/ラクダがサボテンを無害に食べられるのはなぜ
● カラパイア
『ラクダのオスは求愛の為に口から臓物のような器官を出す』
https://karapaia.com/archives/52307798.html
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません