シマウマ③ 強い警戒心で人に懐かない

アフリカ タンザニアの草原では、毎年3月頃新鮮な草が育ち食べ物が豊富になります。この時期にシマウマは恋の季節を迎えます。群れのリーダーのオスにとっては、最も気の抜けない時期なのです。

娘に近づくオスをブロック

シマウマは1頭の強いオスと数頭のメスとその娘たちで群れを作って暮らしています。息子の若いオスは2~3歳位になると群れを出て、単独で暮らしたり、独身オスの群れを作って暮らしたりします。

若いオスは別の群れの若いメスに求愛して家族から連れ出し、新しいカップルになって自分の群れを大きくしていきます。これについて「ますますざんねんないきもの事典」にはこう書いてあります。

シマウマは1頭の強いオスを中心に、その妻となる数頭のメスと子どもたちでむれをつくります。意外にも、むれの構成は天敵であるライオンと同じなのです。
違うのは、肉食動物から身を守るために、いくつかのむれが集まって数千頭の大集団をつくること。すると、ほかのむれのオスが自分の娘に近づいてくることもあります。そんなとき、リーダーである父親は猛烈にブロック。体を張って娘を守ります。
しかし、娘の方はドライなよう。たとえ父親に勝てなくても、そのオスを気に入れば、自分からむれを出ていってしまうんだとか。お父さんもつらいですね。
「ますますざんねんないきもの事典(高橋書店)」P90

そのシマウマの求愛にはルールがあって、ある群れの若いメスに別の群れの若いオスが近づいてくると、群れのリーダーのオスつまりメスの父親は、すかさず反応してメスたちをガードして、声を張り上げ若いオスを威嚇します。それでも相手が引かないと、メスの群れのリーダーが必ずその若いオスと戦うのです。

娘はその戦いをのんきに眺め、もし若いオスが父親に勝てば若いオスについていき、負ければ父親のところに残ります。この求愛ルールに例外はありません。 「ざんねんないきもの事典」には若いメスは若いオスが父親に負けても気に入れば出ていくとありますが、実際には父親が勝てばそのまま群れに残るようです。

シマウマの喧嘩
シマウマの喧嘩(引用:よこはま動物園ズーラシア

シマウマの誕生と成長

シマウマは一夫多妻で、決まった繁殖期はありませんが、出産は雨季の頃に多く見られます。 

シマウマのメスの発情周期が約30日。妊娠期間は種にもよりますがとても長く、ウマが11か月なのに13~14か月約420日もおなかの中に赤ちゃんがいて、普通は1回の出産で1頭のコドモを産みます。
シマウマの赤ちゃんは生まれたときの体重は40kgほどなのでヤギくらいの大きさがあります。目はあいており、耳もピンと立っていて、縞模様もあるのでお母さんにそっくりです。ただ色は親のように真っ黒でなく薄い茶色で成長につれ黒くなっていきます。

野生の場合肉食動物に狙われるので、生まれて10分くらいで自力で立ち上がり、しばらくすると走れるようになります。 生まれてから半年はお母さんからの母乳を貰って育ちますが、3年くらいすると体重は400kg前後の大人になり繫殖を始めます。オスがメスに求愛して群れを作り始めるのもこの頃です。

シマウマの赤ちゃん
シマウマの赤ちゃん(引用:野毛山動物園

シマウマの赤ちゃんは生まれてから1~2か月で、少しずつ草を食べ始めます。7か月くらいでお乳を飲まなくなってからは、草だけ食べて生活するようになります。シマウマの歯は上下きっちり嚙みあっています。その大きい前歯で硬い草を噛みきり、臼のように平たい形の臼歯で硬い草や葉もすりつぶして食べることができます。

草だけ食べているのに、シマウマは草の葉のセルロースを自分では分解できません。そこで栄養を吸収するため、セルロースを分解できる腸内細菌を自分の体に住まわせているのです。
ただ、同じ有蹄類でもウシやヒツジの偶蹄目と、ウマやシマウマなどの奇蹄目では細菌の住む場所がちがいます。ウシやヒツジは胃袋に腸内細菌を住まわせますが、ウマやシマウマは長い盲腸に腸内細菌を住まわせてセルロースを分解してもらっています。 シマウマは長い時間をかけて草を消化吸収するため、体長に対してとても長い消化管を持っているので、胴が太くなっています。

偶蹄類と奇蹄類の違い
偶蹄類と奇蹄類の違い(引用:乗馬メディアEQUIA

優れた身体機能を持つシマウマ

シマウマは嗅覚・視覚・聴覚に関しては、ウマと同じように優れた力を持っています。とりわけ嗅覚は鋭く、ちょっとした変化も感じ取ります。動物園で治療のとき エサの中に薬を混ぜて与えたりすると、たった1錠でも匂いで気づき食べないことがあるほど、匂いにはとても敏感だそうです。

また、シマウマの目は顔の横側に付いています。草食動物の目は広範囲を見渡せて、近づいてくる敵をすばやく見つけて逃げられるように、横向きに付いているのです。中でもウサギは自分の周囲360°をぐるりと見渡すことができます。 ウサギは、この360°の視界を周囲から忍び寄る肉食動物にいち早く気づき、逃れるために使っています。ちなみに肉食動物の目は、より広い範囲を立体的に見て獲物までの正確な距離を測って、狩りの成功率をあげられるように、前側に並んで付いています。

シマウマの優れた身体機能
シマウマの優れた身体機能(引用:理科便覧ネットワーク

このようにシマウマは嗅覚も視覚も優れていますが、聴覚も素晴らしく、ほとんどの方向に向けることができる丸くて大きな耳を自由に動かして、体の位置を変えずに遠くの音の方向を知ることができるのです。


<引用資料>

● よこはま動物園ズーラシア
 『シマウマの行動をご紹介』
  https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/details/post-2662.php

● 野毛山動物園
 『グレビーシマウマの赤ちゃん誕生!』
  https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/details/post-1773.php

● 乗馬メディアEAUIAエクイア
 『偶蹄類と奇蹄類の違いと見分け方』
  https://equia.jp/trivia/post-5767.html

● 理科便覧ネットワーク
 『草食動物』
  https://www.hamajima.co.jp/rika-binran/term/?/term/13302