シマウマ① 白黒の縞(しま)模様の馬?

シマウマは分類上は哺乳類のウマ属に入れられていて白黒の縞模様を持つ系統です。それで和名は「シマウマ」となっていますが、耳が大きく シッポの先端が房状になっているなど、外見的にはロバに似ています。遺伝子的にも、ウマよりロバと近縁だといえます。

グレビーシマウマ・サバンナシマウマ・ヤマシマウマの3種でウマ属のシマウマ亜属という系統を形成しています。

グレビーシマウマ

[グレビーシマウマ]
今はケニア北部とエチオピア南部のみに生息する。
シマウマでは最も体が大きい。
縞が細く数も多い。
1頭のオスが10頭前後の群れを形成して生活。
草食性で毎日水を飲むが、2~5日は飲まなくても生きられる。
(写真:Rainbirder – Grevy’s Zebra Stallion, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=13267554による)

サバンナシマウマ

[サバンナシマウマ]
最も一般的で東アフリカから
アフリカ南部までの草原やサバンナに広く分布している。
脚は短く、丸く太ったずんぐり体形で、幅の広い縞模様。
1頭のオスと2~3頭のメスの群れで一生過ごす。
(写真:Geni – Photo by user:geni, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12041258による)

ヤマシマウマ

[ヤマシマウマ]
頭が大きく、縞模様は背面は細く、お尻にかけて太い。
主に南アフリカ共和国の山地の草原に生息している。
1頭のオスと数頭のメスで小規模のハーレムを形成。
水がなくても最長3日生存。
ウシ科の動物に見られる肉垂が首の下と前脚の脇に見られる。
(写真:User:Moongateclimber – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2782632による)

どうして白黒縞模様なの?

霊長類以外の哺乳類は色を見分ける能力が低いため、シマウマの白黒模様は遠くから見ると周囲の景色に紛れて、捕食者のライオンやヒョウから見つかりにくいのです。

またたくさんのシマウマが群れになっていると縞模様だけが目立つため、それぞれの体の線が消えてしまって「ウマ」の形が見えないので、肉食動物に存在を気づかれずにすみます。

この説が本当ならば、シマウマ以外にも縞模様の動物がいてもおかしくないのですが、シマウマと同じところにいる他の哺乳動物にはなぜ縞がないのでしょうか。

縞模様には吸血昆虫を寄せ付けない効果が確認されています。研究者は、他の哺乳動物はシマウマより体毛が長いためハエに血を吸われにくいからではないかと考えています。皮膚から血を吸うハエにとって体毛は障害になるので、縞模様がなくてもハエは寄り付かないのでしょう。

それに対して他の動物より毛が短いシマウマは、ハエに対する対処法として縞模様が必要だったのでしょう
縞模様には見た目だけでなくもっといろいろな効用があるという研究結果が発表され、存在意義の解明につながる可能性も出てきました。

シマウマのしま模様は「ライオンなどの肉食動物の目をごまかすのに役立つ」と考えられてきましたが、ほかの説が登場しました。
一説によるとしま模様は、体温を下げるのにも役立つとのこと。太陽の光を吸収する黒と光をはじく白が交互にあることで、寒暖差がうまれて空気の渦が起き、体を冷やすそう。さらに体温が低いと、病気のもとになるサシバエを寄せ付けない効果もあるようです。
いっぽうで、しま模様は1頭でいるとやっぱりめちゃくちゃ目立つようです。むれからはなれていると遠くからもはっきりわかり、むしろねらわれまくりです。
「やっぱりざんねんないきもの事典(高橋書店)」P111

2015年、ある調査チームがアフリカ大陸のシマウマの群れの縞模様のパターンを分析しました。シマウマは、生息地によって縞模様の黒い線の太さや数に差があり、色も濃かったり薄かったりします。その差が何によるのか調べた結果、一番関係していたのは気温でした。暑いところに住むシマウマほど、縞模様の数が多くて色も濃い傾向にあることがわかったのです。

これにより生まれた仮説が、黒い縞の部分は白い部分より熱を吸収しやすいので白黒の間で温度差ができるために気流が生じ、小さな空気の渦ができることで微風が起こり体温の上昇を防ぐ効果があるというものです。実際に同じ地域の縞のない哺乳動物と比較して、シマウマは体温が3℃も低かったそうです。

この説も後の実験で、白い縞の部分も炎天下では熱くなり、涼しくなるほどの風は起こらないことが判りました。体温が下がるのも自然の風によることが確認されています。 ちなみにキリンの全身にも大きな柄がありますが、これも体温を下げるためという説が有力です。茶色の模様の下には複雑な毛細血管があり、模様が血流と放熱を促して体温の上昇を防ぐそうです。

縞模様はアブの目をくらます!?

シマウマや足に縞模様のあるウマはアブの多い地域に生息しています。アブ科の虫とシマウマの関係に関する研究が行われていて、吸血性ハエやアブは縞模様の皮膚に着地するのが難しいと言われています。

実験で撮影された映像を分析した結果、アブはシマウマを発見できても、その後の着地に失敗することが確認されました。アブはシマウマに近づくとそのまま通り過ぎたり、体にぶつかったりして、縞模様のないウマに比べて吸血する成功率は4分の1でした。

研究者によると、その理由は縞模様がアブの視覚を妨害しているからだとか。アブはシマウマに近寄ることはできても、ごく近くまで寄るとアブの視覚の解像度が低いため、縞模様で目がくらんでしまうのだそうです。

ツェツェバエ

[ツェツェバエ]
熱帯アフリカの多くに生息する~10mm程度の大型のサシバエ。
吸血で栄養摂取吸血されることにより寄生性原虫による疾患・アフリカ睡眠病に感染する。シマウマの血液はツェツェバエの体内からはほとんど検出されない。
(写真:International Atomic Energy Agency – International Atomic Energy Agency, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=42087829による)

実験で縞模様のないウマに縞柄のコートを着せると、アブに対する抵抗力が増すことが分かりました。研究者によると縞模様のコートを着たウマに近づいたアブは減速せず、通り過ぎたりぶつかったりするのが確認されました。その理由はまだわかっていませんが、研究者は「アブは縞の黒い部分を木と間違い、白い部分を木の間と思って通過しようとした」か「物がアブの視界を横切ったと勘違いした」かの可能性があると考えています。

この現象を利用して、和牛をシマウマのような「ゼブラ柄」に塗る実験が米沢牛の産地・山形県小国町で行われています。ウシはアブやサシバエといった吸血昆虫を嫌がって運動量や食欲が落ち、繁殖がうまくいかなかったり、効率の良い肥育ができなかったりするためです。

シマ模様に塗った牛

[シマ模様に塗った牛] 
黒い牛をシマウマのような柄に塗装し、アブなどの吸血昆虫の被害を少なくする実験。
黒く温かい所を好むアブの習性を利用。
ゼブラ柄にするとアブが近寄らなくなることが確認できた。
(写真:岩手県農業研究センター新たなるアブ除け効果! ~ 外山畜産研究室に「シマウシ」登場」より)

ウシを屋外柵に固定し、足踏みや首、尾を振って虫を嫌がるしぐさの回数を調べた結果、ウレタン製塗料でゼブラ柄にしたウシは、通常のウシと比べて約4~8割、嫌がる回数が少なかったそうです。

このように縞模様がアブに対して有効なのは実証されています。

では縞模様の毛の下のシマウマの地肌は何色でしょうか? 牛のホルスタインは毛色と同じ白黒の柄の地肌をしていますが、シマウマの地肌には柄がなく一色なのです。ただそれが何色かというと明確な資料がなく、毛の生えていない鼻先などが黒いので地肌も黒だという説もありますが、毛をそった結果では「日本人の言う肌色」に近い色のようです。


<引用資料>

● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「シマウマ」
  https://ja.wikipedia.org/wiki/シマウマ

● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「グレビーシマウマ」
  https://ja.wikipedia.org/wiki/グレビーシマウマ

● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「ヤマシマウマ」
  https://ja.wikipedia.org/wiki/ヤマシマウマ

● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「ツェツェバエ」
  https://ja.wikipedia.org/wiki/ツェツェバエ

● 岩手県農業研究センター
 『新たなるアブ除け効果! ~ 外山畜産研究室に「シマウシ」登場』
 https://www.pref.iwate.jp/agri/nouken/kouhou/labo/2021-2/21034_abu_shimaushi.html