キツツキ ① 脳に衝撃を受けても木をつつくキツツキって残念な生き物?!

キツツキについて「ざんねんないきもの事典(高橋書店)」では次のように書かれています。

くちばしをコンコンと木に打ちつけ、あなを開ける(中略) そのときに頭にかかる力は、なんと重力の1000倍! これは人間であれば、頭にトラックがぶつかったときと同じくらいの衝撃だそうです。
「ざんねんないきもの事典(高橋書店)」P106

他の鳥のようにもっと楽な生き方があるのに、こんなに大変な命がけの生き方をしているキツツキは残念な生き物だというわけです。

たしかに肉体的側面だけ見て人間的に考えるなら大変な生き方かもしれませんが、それが残念なことでしょうか?

実はキツツキは木に穴を開けることが出来る唯一の生き物、つまりオンリーワンの存在なんです!

そして穴を開けることで森に住む生き物たちに家を作ってあげて、みんなのために役立っているんです。

それが残念な生き方だと言えるんでしょうか!?

キツツキは木をつつけるように、他の鳥にはない特徴的体の構造をしています。

まるでそのために設計されたと思えるほど、クチバシから舌骨(ぜっこつ)・頭蓋骨(ずがいこつ)の形状・組織や脳の状態まで他の鳥に見られない 独自の構造を持って、キツツキは木をつついているのです。

キツツキ1

キツツキは何故木をつつき続けるのでしょう? 

それは、木から虫や樹液などのエサを掘り出したり、ドングリなどの食物を蓄えたり、巣穴を掘るためです。

それから、異性へのアピールや縄張りの主張をするためにドラミングする目的もあります。

まるで生きるのを楽しみながらつついているみたいです。

オス 500~600回/1日 18~22回/1秒
求愛シーズンには回数が二倍になる

地球上生き物たちは皆かかわりを持って生きています。

自分のために生きるのは当然ですが、同時に他の生命のためにも生きています。

キツツキだって立派に森のみんなのために生きてます!!

キツツキは繫殖期になると巣を作るため木に大きな穴を開けますが、この穴を開ける行為がいろいろな動物を育くんでいるのです。

木の穴やうろに住んでいる生き物は「樹洞営巣類(じゅどうえいそうるい)」と呼ばれますが、自分で穴を開けられるのはキツツキだけです。

キツツキは森のみんなの家を作ってあげる「森の大工さん」なんです。

キツツキは天敵に場所を覚えられないように、毎年新しい 巣穴を掘るので、使用済みの古巣が空きます。

その空いた古巣を自分の巣にして棲む生き物は「二次樹洞営巣鳥類(にじじゅどうえいそうちょうるい)・哺乳類(ほにゅうるい)」と呼ばれ、森に棲む鳥たちやリス、ヤマネ、モモンガなどがいます。

穴が大きくなった木にはフクロウなどの大型の鳥や哺乳類(ほにゅうるい)が棲みますが、最後には枯れて倒れます。

倒れたばかりの固い木はカミキリムシやタマムシの住処になり、やがて倒木が柔らかくなると、そこにクワガタやシロアリが棲むようになります。  

キツツキの木をつつく習性は、樹洞生産者として森の生き物たちに住処を提供し、森林生態系の中で重要な位置 を占めています。

キツツキ2

キツツキはなぜ頭痛にならないの?

キツツキが穴を開けているのは、どれも枯れた木や腐りかけた木なので、つついた時の衝撃は少ないようです。

キツツキはふだんは鳴きますが、他の鳥のように鳴き声でラブコールはしません。良い音のする木を見つけて音を響かせることで異性を呼びます。

しかも音の悪い木ではドラミングしないこだわりをもっています。

そのため激しく木をつつくドラミングをするキツツキは、少ない衝撃でよく響き大きな音が出る、中が空洞の木を選んで使っています。

そういう木を見つけるために、キツツキはつついた時の音の違いを聞き分けたり、試し穴を掘ったりしています。

つつき方もだいたいは軽く当てる程度で、強い衝撃は受けていないようです。

木とくちばしの接触時間が0.5ミリ秒から1.0ミリ秒と短いからです。(フットボールで脳震盪(のうしんとう)を起こすのが15ミリ秒なので、その1/15~1/30の短さです)

キツツキのこのような知恵や能力は偶然に獲得出来るものでしょうか?

また次回に紹介する「木をつつくのに最適化された脳や体の構造」は木をつつきながら長い進化の果てに出来たのでしょうか?

そんなことをしていたら、衝撃を受けて弱ったキツツキは敵にやられて今ごろは絶滅していたに違いありません。