カンガルー② 袋の中ってどうなってるの ?
カンガルーの袋、育児嚢(いくじのう)は、赤ちゃんを守りながら育てるためにあります。カンガルーにはへそがなく、へその緒を通しておなかの中で栄養を摂れないので、カンガルーの赤ちゃんはほかの哺乳類よりずっと未熟な状態で生まれてきます。そんな赤ちゃんでも、無事に育つことができるのがお母さんの袋なのです。
授乳中の母親と子どもは外敵に狙われる危険が多いのですが、袋の中に乳首があるため、赤ちゃんは誰にも邪魔されずにたっぷりと栄養を摂れるし、お母さんは授乳中でも周囲を警戒できます。そのおかげで、カンガルーの赤ちゃんは無事にオトナになる確率が高いため、基本的に1回の出産で生むコドモは1匹のみです。
赤ちゃんは袋の中でおもらし!
2cmくらいの非常に小さい状態で生まれてくるカンガルーの赤ちゃんは、成熟するまで、発育中のほとんどの時間を、お母さんの袋の中で過ごします。ですから食事も排せつも袋の中で済ますしかありません。
それは残念なことではなくて、母親の愛情があるからこそできる行為でしょう。お母さんはコドモの排せつ物をなめて処理してくれますから、コドモが生活する環境は常に清潔に保たれます。うんこやおしっこといっても、赤ちゃんの食事はお乳だけですから、それほど臭くも汚くもありません。
コドモがいる間は親が世話をするので袋の中はきれいになっていますが、独立していなくなってしまうと掃除をする必要がなくなるので、臭くなってしまうそうです。中にコドモがいないときの袋の入口は、とても狭くなっているので、湿気やにおいが充満するからなおさらです。でもコドモにとっては、それも心休まるお母さんのにおいなのかもしれません。
袋の中の驚くべき仕組み!!
袋の中には乳首が4つあります。この乳首からは、哺乳量が少なくても成長を支えるのに十分な栄養を届けられるように、栄養素が高濃度で配合されているお乳が出ます。また、未熟な赤ちゃんが病気にならないように細菌と戦うための抗体を含んだお乳になっています。
栄養成分も赤ちゃんの発育段階に応じて変化していきます。たとえば、赤ちゃんの皮膚に毛皮ができてくる時期に合わせて、生後約3カ月頃には毛の主要構成要素の硫黄(いおう)成分の割合がピークになります。
赤ちゃんが袋から出入りし始める頃になると、授乳初期より高脂質、高たんぱく質になる一方、糖質が減少したお乳になります。また脂肪酸や糖の組成も授乳初期と後期では異なることもわかっています。
驚くことに、母親は同時に複数の種類のお乳を作ることができ、4つの乳首から別々に出すことができるのです。これは、第一子の授乳中に第二子を出産した場合、それぞれの成長に見合ったお乳をあげるためです。
そんな絶妙な仕組みが設計図もなしに、進化論のいう偶然の積み重ねだけででき上るものでしょうか?絶対無理としか思えません。
いつまで袋の中にいるの?
袋の入り口はとても小さくて、一見どこにあるかわかりませんが、とても伸縮性があって、おおきく広がります。赤ちゃんが大きくなるにつれて、カンガルーの袋も伸びるようになっています。それは、強力でありながら柔軟な筋肉と靭帯(じんたい)のおかげです。
母親が袋の筋肉を締めると、口はぴったりと閉じて体にはりつくので、外界の異物をシャットアウトできますし、成長した赤ちゃんが顔を出して動いても、落ちるのをふせげます。
赤ちゃんは約5カ月で袋から顔を出し、その後出たり入ったりを始めます。最初は数秒ですぐに袋に戻りますが、外の世界に興味を持って遊びに出て、徐々に外で過ごす時間が長くなります。
おなかが減ったり甘えたくなったりすると袋に戻る生活が続きますが、10カ月が経ち体重が5kgほどになると、袋では運べなくなるので、母親は袋に入れないようにします。その後も袋から母乳を飲んで育ちますが、生後1年ほどで独立すると、もう袋には戻りません。
オス同士がケンカするわけ?!
カンガルーは群れを作りますが、多くの草食動物同様ボス的な役割の個体はいません。たとえ一番大きい個体でも、中心的存在になることはなく、外敵から仲間や子供を守るといった行動もとりません。わが身に関係なければ一切無関心です。自分に危険が迫れば、それぞれが判断し、一目散に安全な場所へ逃げるのです。
そんなオス同士がケンカをするのには意味があります。強いオスであることをメスにアピールして子どもを作り、より強い子孫を残して種全体を繁栄させていくためなのです。
日頃、繰り広げられるオス同士の「ボクシング」と呼ばれるケンカ行動は、自分の子孫を残すための闘いです。まっすぐ立ち上がって前肢を組み合わせ、しっぽを支柱にして後ろあしで強烈なケリをくり出し、相手を地面へ倒します。これは強い子孫を残すために必要な行動なのです。
カンガルーは交尾後、膣内で精液が固まり栓ができるため、最初に交尾をしたオスは確実に自分の子を残せます。発情したメスと最初に交尾できるのは一番強いオスです。オスのアカカンガルーは死ぬまで成長し続けるといわれています。体が大きいということは、病気や怪我をしないで、長生きをしたことの証明でもあるわけですから、その遺伝子を残すことは理にかなっているといえます。
<引用資料>
● 知力空間
『カンガルーの袋の仕組み|未熟児で生まれる子供のための優れた機能』
https://cucanshozai.com/2019/09/kangaroos-pouch.html
● いきふぉめ~しょん
『カンガルーの袋ってどうなってるの?気になる疑問を詳しく解説!』
https://ikimall.ikimonopal.jp/blog/post-1104/
● 東京ズーネット
『カンガルーのオスの話』
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=tama&link_num=20077
● ひがしやま物語
『カンガルーの授乳』
https://ameblo.jp/tamacat3/entry-12550598633.html
● 須坂市動物園日記
『アカカンガルー「おとひめ」が子育て中です』
https://blog.suzaka.jp/zoo/2019/07/16/p36645
● 週末おでかけMAP
『赤穂 動物ふれあい村【カンガルーさん】赤ちゃん編 <兵庫県 赤穂市>』
http://katak.seesaa.net/article/445775242.html
● 金沢動物園ブログ 「OH!カンガルー」
『オスたちのケンカ』
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/kanazawa/details/post-747.php
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