ダチョウ② 最強のランナー!ダチョウ
足が速い動物といえば?このような質問を受けたとしたら、多くの方がチーターやダチョウを思い浮かべるのではないでしょうか。私たち人間よりもはるかに速く走れる動物たちはたくさんいますよね。その中でも、二足歩行の動物の中で一番足が速いと言われているのがこのダチョウなんです。
ダチョウの足の速さはなんと最高時速70kmにもなると言われています。私たち人間が走る時の平均速度は時速30kmくらいだと言われているので、ダチョウと人間がよーいドン!と徒競走をすると、人間が半分のところまでたどり着く前に、もうダチョウはゴールしていることになります。本当に凄い速さですね。しかも、時速60kmぐらいの速さを維持しながら、1時間以上も走ることができるそうです。速さだけでなく、すごい持久力も持ち合わせていダチョウ。その秘密に迫ってみましょう。
すごい持久力の秘密は肺にあった
鳥類は、私たち人間と同じように肺呼吸をしていますが、その仕組みが違います。呼吸をする時、人間が横隔膜を利用するのに対し、鳥類は気嚢という薄い膜でできたふくろ状の器官を利用しています。多くの鳥は肺の前後にこの気嚢を持っており、空気を溜めたり送ったりしています。空気を吸う時はもちろん、吐く時も、後気嚢に溜められた空気が肺に送られるので、酸素が薄い高高度でも飛び続けることができるような強力な持久力を得られるというわけです。このような呼吸の仕組みにより、ダチョウも時速60kmのスピードのまま、1時間以上もの長い時間走れるんですね。(図1参照)
軽やか!最速!ダチョウの脚の構造
身長210~280cmのダチョウは、100~120cmにもなる長い脚を持っています。ダチョウの脚を動かす筋肉の大半は、上体の近くについています。大腿(太もも)は、股関節や膝を曲げ伸ばしする筋肉が発達していて、足を力強く動かす役割をしています。ダチョウはこの筋肉がついている大腿は短く、膝から下は細くて長いので、足全体としては軽い構造になっています。先端が軽い分、より小さな力で素早く足を振り上げることができるというわけです。このように、ダチョウは体の中心部に筋肉が集中しているので、低エネルギーで効率的に筋肉を利用することができます。かつ、体の先端部にある頭部が小さく軽いので、重心を保ちやすく走ってもぶれにくい体型になっています。
鳥類には、 足首から下の部分に足根中足骨(そっこんちゅうそくこつ)という骨があり、これは人間の脚でいうと足裏や甲の部分に該当します。(図2参照) ダチョウが立っている姿を人間に当てはめると、ちょうどつま先立ちをしているような状態だということができます。つま先立ちになるとアキレス腱がピーンと伸びた状態になります。ダチョウのこのアキレス腱は、伸びた状態から元に戻ろうとするときに弾力性を発揮して、3~4tにも及ぶ物凄いキック力を生み出すことができると言われています。言い換えればダチョウの脚は、強力で大きなバネをを持った構造になっているということです。
さらにダチョウの足の指は2本構造になっていて、力を分散させず、地面を強く蹴ることができます。(写真1参照) 一般的に鳥類は足の指が4本、ダチョウと似ているエミューは3本ですので、ダチョウの足の指は、速く走るための構造になっていることがわかります。そして、足裏には脂肪でできた絨毯のような足パッドがついています。(写真2参照) ダチョウは地面から体重の6倍ほどの衝撃を受けているといわれていますが、この足パッドが衝撃を和らげ、足に掛かる負担を少なくしているのです。
このような構造により、ダチョウは力強く地面をポーン!と蹴り、なんと5mにもなる大きな歩幅を生み出すことができます。5mといえば、ワゴン車1台分くらいは優に超えられる長さにあたります。
まだまだある!速く走るための体の秘密
ダチョウは鳥でありながら飛べませんが、2m以上もの大きな翼を持っています。この大きな翼には重要な役割があります。そのひとつは、高速で走るための操縦です。ダチョウは翼を舵のように使い、方向転換したりブレーキをかけたりしながら走っています。また、走るときには体幹がぶれないよう、うまくバランスを保つことが大切ですが、その重要な役割を翼が担っているのです。翼は他にも、体温調節、卵やヒナの保護、外敵への威嚇などいろいろな役割を担っています。何よりも雄の求愛ダンスにこの翼は欠かせません。ふわふわの翼をより大きく広げて左右に揺れながら、細長い首を後方に反るポーズを取って雌にアピールする姿は、何とも愛らしいものです。(写真3参照)
またダチョウは、長くのびた首を持っています。 これは地上の巣を管理したり、地面に生えた植物を食べたりするためですが、それだけではありません。柔軟で軽く、上下、左右、前後に動かすことができる首をのばしながら、遠くまで見渡せる目を光らせ、敵がいないか注意深く観察しています。首が長く頭部が小さいので、その姿はまるで潜望鏡のようです。走るときには首を水平に保ち、敵を察知するとより速く走れるように首を下げ、空気抵抗を少なくして走ります。自由自在に動かすことができる長い首もまた、ダチョウがサバンナで生きていくために必要なものであり、速く走るための秘密が隠されていると言えるでしょう。
短距離長距離オールマイティーの最強ランナー、ダチョウの体にはこんなにたくさんの構造の秘密が隠されていたのです。速く走るために設計されたとしか考えられない、すごい仕組みを持ったダチョウであることがお分かりいただけたでしょうか。
<引用資料>
● ナゾロジー
『100年謎だった「鳥類の肺は空気の流れが一方通行になっている」仕組みを解明 空気が薄い高所を飛べる理由』
https://nazology.net/archives/85532
● キッズネット
『鳥の肺のはたらきは、人間とどうちがう?』
https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0164/
● 生物モラトリアム
『ダチョウの走る速さはどれくらい?足の構造と持久力についても』
https://namamono-moratorium.com/dachou-2714
● ウィキペディア
『足根中足骨』
https://en.wikipedia.org/wiki/Tarsometatarsus
● 世界雑学ノート
『ダチョウの速さ速度とは?』
https://world-note.com/ostrich-speed/
● Quora
『なぜ同じ二足歩行のダチョウに比べて人間は遅いのか?』
https://jp.quora.com/naze-onaji-ni-ashi-hokou-no-dachou-ni-kurabe-te-ningen-ha-osoi-no-ka
● 痛くない人工膝関節手術3
『アフリカンダチョウが時速60㎞でマラソン距離を40分で走れる』
https://ameblo.jp/itakunai-jinnkouhiza3/entry-12639968053.html
● Arch Physical Care Group
『短距離走を速く走るための秘訣①(足の接地の仕方) アシスト鍼灸整骨院(磐田市)』
https://www.arch-treat.com/news/detail/131
● これちょっと気になる
『ダチョウの足の速さの秘密は足の指!』
https://koreyokatta.net/dachou-ashi-no-hayasa/
● るーちゃんブログ
『ダチョウの足は何で速いの?秘密は足のクッションにあった![大人の生きもの図鑑]』
https://14kangaroo.hatenablog.com/entry/ostrich-foot
● 野毛山動物園
『世界ダチョウの日①』
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/details/post-1248.php
● ホンシェルジュ
『5分でわかるダチョウの生態!足の速さや卵、食用肉などをわかりやすく解説!』
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/6673
● 野毛山動物園
『暑い日には…これ!』
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/nogeyama/details/topic55.php
● 写真でイスラーム
『直径5cmの眼球・・・ダチョウその3』
https://mphot.exblog.jp/15062805/
● 東京経済ONLINE
『キリン「長い足の半分は足の裏だった」驚きの事実』
https://toyokeizai.net/articles/-/621612?page=2
● zoo zoo diary
『すごいぞダチョウ!知れば知るほど面白いダチョウの生態と特徴』
https://zoozoodiary.com/facts/ostrich/#
● ニコニコ大百科
『ダチョウ』
https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%80%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6
● ナショナルジオグラフィック
『意外としたたか ダチョウの素顔』
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/20/081400469/
● 面白雑学・豆知識ブログ!
『ダチョウに関する雑学』
https://omoshirozatsugaku.jp/entry/2024/02/28/164848
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