すごすぎるアリたちの話 ② アリの体は相手のためにある!

甘露(かんろ)とは、アリマキが植物の汁をすい、必要な養を吸収したあとに、おしりから出す糖分をふくんだよぶんな水分です。このあまい甘露は、アリたちの大事なエサになります。

アリとアリマキは助け合っている

働きアリが、触覚(しょっかく)でアリマキの体をたたくと、アリマキはおしりをもちあげ、甘露を排せつします。

アリマキのおしりの先で水玉のようにふくれた甘露を、アリたちは口からすいこみます。

アブラムシのおしりに口をつけて、おしっこをごくごく飲みます。
~ 中 略 ~
クロオオアリは、そのお礼にアブラムシの敵を追いはらってあげるので、おしっこでやとわれた用心棒(ようじんぼう)といったところです。
「ざんねんないきもの事典(高橋書店)」P122

アリは、おしっこをもらって、かわりにアリマキ(アブラムシ)を守っているから、残念な生き方をしてるというわけでしょうか?

それこそ人間的目線でみた決めつけにほかなりません。おしっこといいますが、アリにとっては大事なエネルギー源です。

アリマキには、アリマキを食べるテントウムシなどの敵がいます。でも、アリがまわりにいると、敵もなかなか手をだせません。 

クロクサアリは、いつもアリマキをとりかこんでいて、テントウムシが来ると、足にかじりつき、おしりから蟻酸(ぎさん)をふきかけて攻撃します。

それだけでなく、もっと積極的に、アリマキを土や、わらくずで外敵からかくしたり、植物の汁がよく出る新芽の部分に、はこんでやったりするトビイロケアリというアリもいます。

アリとアリマキは、ざんねんどころか、おたがいに助け合って相手のために生きているのです。

アリマキの土をはがしたところ
アリマキの土をはがしたところ
(引用: 自然の観察事典⑮「アリ観察事典」偕成社 P9)
土でおおわれたアリマキ
土でおおわれたアリマキ
(引用: 自然の観察事典⑮「アリ観察事典」偕成社 P9)
アリマキがおしりから出した甘露をなめるトビイロケアリ
アリマキがおしりから出した甘露をなめるトビイロケアリ<体長3~4mm>
(引用: 自然の観察事典⑮「アリ観察事典」偕成社 P7)

アリはみんなのために働く!!

働きアリが集めた花蜜(かみつ)や甘露(かんろ) は、自分のための食べ物ではありません。一生懸命集めても、自分のエサになるのは、ほんの一部だけです。体の構造が、集めたエサを全部自分のものにできないようになっているからです。

アリの体の構造
アリの体の構造(引用: 自然の観察事典⑮「アリ観察事典」偕成社 P11)

口から飲み込んだエサは、食道を通って、まず「そのう」にたくわえられます。

「そのう」とはアリの食道に続く部分で、蜜などのエサをたくわえるところなので、蜜胃(みつい)とよばれています。

「そのう」と、前胃という自分の胃腸のあいだは筋肉で、細くくびれていて、特別な弁のようになっています。

この弁は、蜜胃が花蜜や甘露でいっぱいになるほど、とじてせまくなるので、蜜が後ろの胃腸に大量に流れ込まないようになっています。そのため働きアリは、どんなにたくさん蜜を集めても、自分のエサにはできないのです。

自分の体が自分のためでない構造というものが、偶然の積み重ねの進化で、たまたま出来上がるものでしょうか?

アリという存在の全体を設計する、設計者の視点があってこそ出来あがる個の形であるとしか考えられません。だとしたら、それは間違いなく最初から、その形になるようにプログラムされていたということです。気づかず踏みつぶしてしまいそうな小さな命でも、実は大きな生命循環の設計図の中に組み込まれて、ちゃんと人間以上に秩序的に存在しているのであって、偶然の進化で生まれたなんて言ったら、アリに失礼です!?

蜜胃(みつい)はみんなの食糧貯蔵庫(しょくりょうちょぞうこ)

アリの巣
アリの巣(引用: 自然の観察事典⑮「アリ観察事典」偕成社 P17)

アリの巣をよく見てください。アリの巣の中にあるものは、たくさんのアリと白い幼虫だけで、食糧をたくわえる貯蔵庫(ちょぞうこ)のようなものはいっさいありません。

ではアリが運んだ死んだ虫はどこにいったのでしょうか?

巣にはこばれた虫の死体は、巣口(すぐち)の下の広間で、働きアリによって解体(かいたい)されます。

そして、たくさんのアリによってかみくだかれ、新鮮(しんせん)な肉汁(にくじゅう)だけがアリの胃の中にたくわえられます。

タンパク質をふくんだ肉汁は、アリたちの胃におさめられて、貯蔵(ちょぞう)されています。

つまり蜜胃(みつい)は、アリにとっては、みんなのためのエサの貯蔵庫(ちょぞうこ)なのです。

それで、蜜胃はみんなのための胃袋という意味で、社会胃とよばれます。

巣にいる若い働きアリたちが貯蔵庫の役目をして、年上の働きアリたちが、危険のある外で集めてきたエサを、蜜胃にためています。

これがアリの巣の食糧貯蔵庫(しょくりょうちょぞうこ)です。

触覚で相手をたしかめエサの蜜を要求しあうクロヤマアリ
触覚で相手をたしかめエサの蜜を要求しあうクロヤマアリ
(引用: 自然の観察事典⑮「アリ観察事典」偕成社 P10)

同じ巣のアリたちは、触覚でなかまであるにおいを確認すると、口移しでエサを分けあたえあいます。

エサをもらうアリは、触覚(しょっかく)と前足で相手の頭をたたいてエサがほしいと伝えますが、お腹がすいているほど、たたく回数が多くなり激しくなるようです。

あたえるアリは、蜜胃から吐きもどして、短時間でかなりの量を分けあたえることができます。

それだけでなく、同時に情報交換もしているのです。

巣から来たアリが、働きアリに胃の内容物を渡すと働きアリは巣の食糧の貯蔵状態を知って、巣で足りない栄養素を含む食糧を集めます。

そうすることで巣の栄養状態が、かたよらないようにしているのです。


<引用資料>

● 自然の観察事典⑮「アリ観察事典」偕成社(文/小田英智 写真/藤丸篤夫)

● 蟻という生き物
  http://www.antroom.jp/ant.php

● ありんこ日記 AntRoom
  http://blog.livedoor.jp/antroom/