キツツキ ③ キツツキの体は奇跡に溢れてる
ほとんどの鳥のクチバシが湾曲(わんきょく)しているのに対してキツツキのクチバシはほぼ真っ直ぐで大きく、根本が太くなっていて、先が縦に平らで大工道具のノミのような形をしているので木に穴を開けやすくなってます。
この形状は穴を開けるためだけでなく、発生した衝撃を下あごに伝え、首に逃がす効果があると考えられます。
そしていくら木をつついても、クチバシは人間の爪のように少しずつ伸びるので減りません。
キツツキのクチバシは違う!!
キツツキは上クチバシが下クチバシより1.2mmほど短く、可動性があるのでクチバシに加えられた衝撃は直接脳に行かず、頭蓋骨(ずがいこつ)の周りの底部と後部の頑丈(がんじょう)な骨とクチバシの下あご側に分散されて伝わり、脳に圧力がかからないようになっています。
キツツキの下あごの蝶番(ちょうつがい)を形成する方形骨は他の生物ではありえないほど大きく、衝撃を脳より後ろの首に直接逃がす働きをすると考えられます。
前回のキツツキの頭部の図解に記述したように、首にある筋肉はとても分厚く強靭(きょうじん)なので、衝撃が伝わっても十分に耐えられるように出来ていて人間のようにむち打ちにはなりません。
キツツキは衝撃を回避する方法を知っている
キツツキは脳やクチバシだけでなく、体の構造や行動の仕方までも衝撃を受けないようにできています。
キツツキの足の指は4本ですが、多数の鳥が前3本・後1本と固定されているのと違い、広範囲に動く指(第4趾)があり、前後に角度を自由に変えて状況に適した形を作れます。
また他の鳥より指が太く筋肉が発達しているので木に登ったり幹にしっかり掴まって体を固定したり出来ます。
尾羽は他の鳥より羽軸(うじく)が長く硬くて、尾骨(びこつ)を動かす筋肉が発達しているので尾羽をぴったりと幹にくっつけ木に垂直に止まることが出来ます。
また他の鳥に比べてかなり短い足も、垂直に止まるためにはとても有利になります。
キツツキの目が守られる仕組み
上下のまぶたとは別に水平に動いて眼球の保護をする半透明の膜・第三眼瞼(だいさんがんけん)が目の内側から瞬間的に出てきます。
キツツキは木に穴を開けて長い舌で虫を食べますが、それは虫の害から木や森を守ってもいるのです。
他の生き物にはない「木をつつく」というオンリーワンの能力を可能にしている体全体の高度な耐衝撃システムや、リスクを避ける知恵などをいったいどうやってキツツキは手に入れたのでしょう。
それらはどれ一つが欠けても有効に機能しません。
気が遠くなるほどの長い時間をかけながら少しずつ獲得していくという進化論的手法で、キツツキが木をつつくようになることは出来るのでしょうか?
最初から「森の大工さん」になる役割を担(にな)って、そのために必要なフル装備をした存在として設計されて誕生してきたと考えるほうが、偶然が積み重なって木をつつくようになったというよりはるかにあり得ると思いませんか?
これだけ緻密(ちみつ)に計算された設計は、設計者がいなければ出来るはずがありません。
キツツキ自身のことはもちろん、森全体の生きものたちや生態系まで思いやって完璧なまでに作り上げられた見事さには驚きを超えて、感動以外にはありません!!
ざんねんでなかったキツツキバンザイ!!
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません