進化論が加速させた自然破壊

 最近、世界的に一気に話題になり始めた環境問題。ニュースを見ていると、必ずと言っていいほど「脱炭素」「CO2」と言ったキーワードが目に入ってくるようになりました。確かに、昨今の異常気象や夏のうだるような暑さなどを見ても環境破壊問題、特に地球温暖化は本当に深刻な問題です。

 果たして今のままで、地球温暖化を止めることができるのか……。そして次の世代が安心して住むことのできる地球の姿を、私たちは保全することができるのか、今の政府や企業の努力によって環境問題は根本的に解決することができるのでしょうか?今の世界の取り組みを見ている限り、わたしには到底解決可能な問題とは思えません。

 そこで今回、そもそもなぜここまで環境問題が深刻になってしまったのか、その原因を調べてみました。そこで行き着いた一つの結論があります。それが…進化論です。猿から人に進化したという、今やみんなが当然と思って受け入れているこの進化論にこそ、深い問題があったのです。

進化論の登場とその思想的変容

 進化理論を世に確立させたのは、言わずと知れた英国人科学者、チャールズ・ダーウィンです。彼は、すべての生物は過剰に繁殖するようになっているため、必然的に生存闘争をするようになる、その中で環境により適したものが生き残っていくと論じました。要するに全ての生き物は対立関係にあり、生存をかけたサバイバルを行っていて、その中でクチバシがのびたり、足が速くなったり、と進化が起きていくと考えたのです。この考え方を突き詰めていくと、進化というのは生存闘争の中で勝利することであり、今の生命は果てしない闘争の中で生き残った者の集まりだということになるのです。

 その後進化論は大論争の末、次第に受け入れられるようになり、いまでは教科書に載るほど常識のようになりました(特に日本で)。しかし、この理屈には大きな問題があります。それは、生命が偶然によって進化したとするならば、今の自然環境は全て偶然の積み重ねによって成り立っている、とするところです。このように考えると生命の起源も、地球の青さも、雄大な自然も、存在する結果の全てが偶然の産物ということになるわけです。

 さらに、進化論者はこう述べます。あらゆる生命には生存と種の保存のための本能が備わっているので、必然的に生物間で生存をかけた闘争が起きる。食うか食われるかの熾烈な環境の中で、強いものがより上位に立ち、弱いものは淘汰され、食物連鎖のピラミッドが成り立っていくのだ…と。つまり進化論は、私たちの世界観を抜き差しならない対立的関係に落とし込んでしまったのです。進化論推進者の中には、生物には生存のための利己的な遺伝子が組み込まれている、相手のために生きる行為でさえ、自己の生存が安泰になるためのパフォーマンスなんだと啖呵を切った人さえいます。

 しかしこれはとんだ間違いです。自然は偶然の世界で闘争しているのではなく、共生しているのです。小さな命は大きな命の中に組み込まれ、より大きな生命を生かしてくれているのです。単に進化しているのではなく、お互いのために生きあって発展しているのです。

環境破壊に油を注いだ進化論的思想、解決策はあるのか?

 進化論は自然生命相互の関係を、偶然の連鎖の結果できた関係とすることによって、その価値を限りなく低くしてしまいました。そして自然の強者である人間がその生存と発展のために弱者たる自然環境を破壊することを躊躇なく行えるようにしたのです。もちろん、自然破壊は進化論をきっかけに始まった問題ではありません。しかし、進化論の登場以降、産業革命、資本主義の台頭、植民地化による自然破壊、そして二度にわたる大戦、そして急速な現代化の波をみてみる時、人類に与えられた自然環境の意味を問うことなく、自己の利益のために環境を利用する姿勢が完全に定着したきっかけを、進化論が提供したように思えてならないのです(写真1)。実際に、進化論は自国の発展を強く望む欧米の政治家に大変よく受け入れられたと言います[1]。そのようにして、世界のCO2排出量は、進化論が登場した1850年代から一気に増加し始めていったのです。(図1)

ブラジルの森林伐採
(写真1)ブラジルの森林伐採。豊かな森林と伐採の跡地の境目がはっきり見える。
CO2排出量と濃度の変化
(図1)CO2排出量と濃度の変化(引用: http://www.rikuden.co.jp/energie-mix/co2emissions.html

 進化論が人間に与えた世界観の変化は、人間を無差別の環境破壊へと導きました。そして後戻りがきかないところまで自然環境を追い込み、その反動で今度は逆に人間が追い込まれているのです。

 大きな視点から考えるとき、環境破壊の問題は、進化論がその根底にあったと言わざるを得ません。自然を共生の観点からではなく、生存闘争、適者生存の対立関係に見る世界観に人間を陥れたからです。進化論こそが、自然破壊の病原なのです。

 自然破壊が進化論という思想が根っこにある問題だったとすれば、単にCO2を減らせば、グリーンエネルギーを推進すれば、という対処療法で本当に解決ができるのでしょうか。

 次回は、地球温暖化と同様に問題となっているプラスチックゴミ問題に光を当ててみたいと思います。


[1] 歴史家のジョフリー・ウェスト「あらゆる人間が、ダーウィン説に飛びついた。自分たちの行動を支えるものとして使おうと思ったからだ。ニーチェとマルクスに始まり、貴族主義者、民主主義者、個人主義者、社会主義者、資本主義者、軍国主義者、そして唯物論者までが、進化論を歓迎したのであった。」エントロピーの法則Ⅱ114頁 ジェレミー・リフキン 竹内仁訳 祥伝社