コアラ② 毒性のあるユーカリを消化できる特別な機能と仕組み
コアラがユーカリの葉を食べた後、お腹の中でどのように消化と解毒が行われているのでしょうか。
それは盲腸にカギがあります。私たち人間の盲腸はわずか5~7センチの長さで、ほとんど消化の役割を失ってしまっていますが、草食動物は盲腸で草を消化分解しているのです。
コアラの盲腸はなんと2メートル
馬や牛の盲腸は約1メートル程あります。体長65~80センチの小柄なコアラですが、コアラの持つ盲腸の長さは、牛や馬の2倍、なんと2メートルもあります。こんなに長い盲腸が、ユーカリの葉を消化し解毒するために、重要な役割を果たしているのです。
ミクロのレベルで見てみましょう。この盲腸の中には、何百万もの細菌が存在します。そして腸管の内壁に、より多くの細菌が効果的に配置できるように、互いに柵状の構造をつくって強力に接着しています。
そして、様々な細菌が数のバランスを取りながら、一つの調和された生態系をつくっています。その形態が、まるで植物が群生したお花畑のように見えるのです。花畑を英語でflora(フローラ)ということから、この腸内細菌でつくられた生態系のことを「腸内フローラ」とよんでいます。
盲腸には粒子の大きさを選別する仕組みも
この腸内フローラの中では、葉の成分を分解させ、乳酸やアルコールなどの有用な物質を生成する、いわゆる「発酵」が行われています。そして小さい粒子のほうがより発酵しやすいため、腸内に入ってきた食物を、大きい粒子と小さい粒子に選別するメカニズムが備わっています。大きな粒子は盲腸に滞留させずに早く通過させ、小さい粒子は腸内に100~200時間(4~8日間)もの長い時間滞留させて、ゆっくりとエネルギーを作り出しているのです。
ユーカリは「タンニン」という毒性成分を含み、これが動物の栄養源である「たんぱく質」と結合してしまうため、「たんぱく質」が栄養素としては用いられなくなります。そのため、通常、動物の餌として適さないのです。しかし、コアラの腸内には、「タンニン」が「たんぱく質」と結合してできた複合体を、分解してくれる細菌がいるのです。さらには、有毒物質を無毒化して体の外に排出する、いわば、解毒できる「酵素」を持っています。ですから、コアラは毒性のあるユーカリを餌として食べることができるのです。このようにして作り出されるエネルギーは小さいため、コアラは樹上で一日中寝て、エネルギーを節約していると考えられています。
目に見えるコアラの姿は、一日中休んでいてのんびりしていますが、外側からでは見えない、その小さな体の中では刻々とたゆまずに、毒をもエネルギーに替える生命の営みがなされていたのですね。本当に驚きです!
長い時間 樹の上で寝ることができるコアラの体の構造
樹の上で長い時間うとうとと寝ている姿が可愛いコアラですが、寝入って、落ちてしまうことはないのかな? ずっと樹の上で座っていてお尻は痛くならないの?なんて考えたことはないでしょうか?
まず、コアラの前足を見てみると、親指側が2本で他の指と違う向きになっています。私たち人間の手でいうと、ちょうど親指が2本あるような状態です。そして鋭い爪を持っているので、しっかりと木をつかむことができるのです。また、コアラの骨盤はカーブしていて、樹の上に安定して座れる形をしているのです。おまけに、お尻の部分にある毛が、密集して生えていて、硬い枝の上では、ちょうどクッションの役割をしているのです。
このお尻の毛は、斑点様のまだら模様で、樹の下から見るとカムフラージュで、天敵から見つけづらくなっているのです。このようにコアラは、樹の上で長い時間過ごしても、しっかりと木をつかんで、お尻も痛くならない、体の構造をしているのです。
次回最終回はコアラにとって大切な腸内細菌がどのように受け継がれていくのか、「母から子に伝わる腸内細菌」についてお話したいと思います。
<引用資料>
● Mykinsoラボ(マイキンソーラボ)
『100時間以上かけてユーカリを消化するコアラの腸内細菌叢』
https://lab.mykinso.com/kenkyu/20170912_1/
● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「コアラ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/コアラ
● Australian Koala Foundation
『身体的特徴と生態』
https://www.savethekoala.com/japan/jpkoalasphysic
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