ラッコ① ラッコは毛づくろいし続けないと死ぬ?

ラッコ

ラッコの毛皮の秘密

ラッコというとどんなイメージがありますか?

水の上に浮いて、貝を石で上手に割って食べる可愛らしい姿を誰もが思い浮かべるのではないでしょうか。

ラッコは漢字では海獺、英語でもSea Otterといい海の獺(カワウソ)という意味になります。

生物学的にはイタチ科であり、要はイタチが進化して水中生活をするようになったのがカワウソ、その中でも海洋に進出したのがラッコ、と考えられているようです。

このラッコについて「ますますざんねんないきもの事典(高橋書店)86ページ」にはこのようなことが記してあります。

「ラッコは毛がよごれると、空気をためる働きが弱まり、体がぬれて凍死してしまうため、食事と睡眠以外の時間は毛づくろいに費やさなければなりません。」

つまり、1日の中の多大な時間を毛づくろいに費やさなければならず、さもなければ死んでしまう。という生き方が残念だと書かれています。

グルーミング=毛づくろい というのは動物界においては非常に重要な意味を持ち、清潔さを保つのはもちろん、リラックス効果や体温調節、猫などでわかるように個体同士におけるコミュニケーションツールや愛情表現の役割も担っているとされています。

ラッコも類に漏れず、このグルーミングという行動が生命維持に欠かせないわけなのですが、彼らの場合には毛皮自体にも様々な秘密があるようです。

密集している体毛

ラッコの体毛の密度は哺乳類一とも言われ、全身で約8億本の毛が生えています。人間の毛髪が平均10万本と言われていますが、1平方センチメートルあたりにその約1.5倍の毛が生えていると考えて頂ければとんでもない密度であることがお分かりいただけるかと思います。

ラッコの生息地は、北太平洋の沿岸から10km圏内の、水温が4~10度ほどの極寒の海であり、その中で生き抜くにはこの毛皮が頼りとなります。

しかし、毛布などを洗濯した時のことを思い起こしてみて下さい。濡れるともの凄く重くなりますよね?毛がそんなにも多いと重くなり水に沈んでしまうのではないでしょうか??

ラッコはただ大量の毛皮によって暖かさを保っているわけではありません。毛と毛の間に微小な空気の層を作ることで、直接皮膚が海水に触れず、且つ羽毛布団やダウンコートと同じ原理で体温低下を防ぐことができるのです。

また、ラッコの体毛は二重の構造になっており、ガードヘアと呼ばれる長い毛とその下のアンダーファーと呼ばれる細かい毛があります。ガードヘア1本あたり、12〜108本アンダーファーが生えているといわれています。これによってより空気の層が出来やすくなっていると考えられています。

さらにもっとミクロな視点で見ていくと、その表面はトゲトゲとしていて、毛同士が絡みやすくなっています。

ラッコの体毛

ラッコは成獣で体長約1〜1.3m、体重は20〜30kgになります。そこに8億本という量の毛があっても、あのようにプカプカと浮くことができるのには、体毛の二重構造によって空気の層が出来やすいという秘密があるからなのです。

水中を泳ぐラッコ

またラッコはほとんど陸に上がることはなく、海上で生活し、そのエサは貝類や甲殻類などです。それらを獲るためにラッコは水深20メートルほど潜水することができますが、そうすると毛皮から空気が押し出されてしまうので、また空気を含ませるために毛づくろいが必要になってきます。つまり、ラッコにとってグルーミングは清潔に保つというだけでなく、空気を取り込むこと、断熱機能を保つことという生きていくための重要な役割があり、体調のバロメーターにもなるのです。

極寒の中でも体温を維持して生きることが出来るよう、一通りでない仕組みをもったラッコ。

皮下脂肪ではなく、毛皮の構造によって空気の層を作り出すことで、浮くこと、潜ること、体温調節の全てを可能にし、それを維持するためにする毛づくろいが果たして残念なことだと言えるでしょうか。 また、これだけの複雑な構造が、イタチが海に出て進化したという偶然によって果たして生まれるものなのでしょうか?毛皮の構造を知れば知るほど、非常に綿密な計画性を持って創造されたもののように感じられます。

水面に顔を出すラッコ

残念なことに、このような立派な天然の断熱材を人間はsoft gold(柔らかい金)ともてはやし、一時期ラッコは絶滅寸前まで追い込まれ、現在も絶滅危惧種に指定されたままです。

またラッコは皮下脂肪が少ないため、体毛に油が付着すると水を弾かなくなって、空気の層を作れなくなるため、海水に体温を奪われるだけでなく、浮くことも出来なくなってしまいます。タンカーの座礁など、海洋への石油流出による影響もラッコの生体減少の一因となっているようです。

次回はラッコの食生活について掘り下げていきます。


<引用資料>

● らっこちゃんねる sea otter channel
  https://seaotter.jimdofree.com/

● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「ラッコ」
  https://ja.wikipedia.org/wiki/ラッコ

● ホンシェルジュ
 『意外と知らないラッコの生態!グルメな食生活や性格などをわかりやすく解説!』
  https://honcierge.jp/articles/shelf_story/5879

● 猫との暮らし大百科 「飼い方」
 『猫はなぜ「毛づくろい」をするのか?必要不可欠なこと?』
  https://www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/4730.html