キツツキ ② キツツキの頭部は設計されている

キツツキについて「ざんねんないきもの事典(高橋書店)」では次のように書かれています。

脳が小さくなければそんなばかげたまねはしない
「ざんねんないきもの事典(高橋書店)」P106

確かにキツツキの脳はとても小さくて約2gしかありません。

だから考えが足りなくてダメージがあるのに木をつついているとでもいうのでしょうか?

キツツキの脳が小さいのは偶然ではありません。木をつついても大丈夫なようにあえて小さくなっているのです。

脳が大きいほど質量が増して、衝撃を受けた時のダメージが大きくなりますから、衝撃から守られる脳の大きさに設計されていると考えられます。

キツツキ独自の高度な耐衝撃システムを紹介しましょう。

キツツキの脳が衝撃に強いのには理由がある!!

キツツキの脳は「木をつつく行動」を前提として、大きさや構造が決まっている、つまり設計されているのです。

まずキツツキの脳は高性能のヘルメットをかぶっているのと同じ状態です。

脳脊髄液(のうせきずいえき)も少なめで、人間ほど遊びの部分がなくきつきつに詰められているので脳と頭蓋骨の隙間がほとんどなく、頭蓋骨にすっぽり収まっているので中で揺さぶられず安定するようになっています。

そのうえ脳の形は前後の衝撃に強い半月形になっていて、正面に平らな方が向いています。

頭蓋骨(ずがいこつ)の中で脳がぶつかっても表面積が広いので衝撃が逃げやすいようになっているのです。

つまり脳の向きや形、位置までも耐衝撃に最適になるよう設計されていると言えます。

頭蓋骨と脳の形

キツツキ

頭蓋骨と脳の形(キツツキ)

人間

頭蓋骨と脳の形(人間)

<参考> Gibson, L. J. “Woodpecker Pecking: How Woodpeckers Avoid Brain Injury.” Journal of Zoology 270.3 (2006): 462–465.

このシステムを研究することにより、アメフト選手を脳震盪(のうしんとう)から守るヘルメットを考案したり、精密機器を保護する衝撃吸収システムを開発したり、人間も多くのあらゆる分野でキツツキの精巧で緻密(ちみつ)な「つつきのメカニズム」の恩恵を 受けています。

頭にあるもう一つの弾力構造

鳥の舌には舌骨(ぜっこつ)という骨がありますが、キツツキの舌骨(ぜっこつ)は衝撃吸収のために独特な弾力構造をしています。

キツツキの種類によって違いますが、キツツキの長い舌はクチバシの上側の付け根とか眼瞼(がんけん)の周囲とか鼻孔(びこう)とかから始まり、頭蓋骨(ずがいこつ)をぐるりと丸く取り囲んでクチバシに達しています。

それがシートベルトみたいになって衝撃吸収の役割をしています。

キツツキの衝撃吸収システム

キツツキの衝撃吸収システム

舌骨の筋肉は普段は緩めていますが、舌を使うときは収縮することで舌骨を押し出します。

頭蓋骨(ずがいこつ)の一部は軟化(なんか)してスポンジのようになっています。

このスカスカの海綿骨(かいめんこつ)は変形しやすい性質を持っているので、脳を包み込んで衝撃が直接脳へ伝わらないようにしています。

次回はキツツキが頭部だけでなく、体全体で耐衝撃システムを作り上げていることを通して、単なる偶然では説明できない高度なプログラムがあるのを明らかにします。