生命科学が明らかにしたデザインの存在 ③ ビックリ仰天!タンパク質の配送システム

細胞内のタンパク質合成工場 リボソーム

 生物の体には様々な組織を作り出したり、色々な機能を果たしたりするタンパク質が存在していますが、細胞の中にあってそれらのタンパク質を作り出しているのがリボソームです。リボソームは、数本のRNA分子と50種類ほどのタンパク質からなる巨大なRNA・タンパク複合体で、DNAから転写されてできたmRNA(メッセンジャーRNA)の持つコード化された情報を翻訳して様々なタンパク質を作り出す細胞内のタンパク質合成工場です。

リボソーム(Ribosome)

リボソーム
PDBjの生体高分子学習ポータルサイトより
https://numon.pdbj.org/mom/121?lang=ja

 リボソームの作り出すタンパク質の中には、そのまま細胞質の中で働くタンパク質もあれば、ミトコンドリアや核のような細胞内のある特別な区画に運ばれていくものもありますし、また、ホルモンのように細胞外に運び出されていくタンパク質もあります。それぞれのタンパク質はその独自な機能によって働くべき場所が決まっているので、その場所へ適切に運ばれていく必要があります。

 リボソームには細胞質中に存在する遊離リボソームと粗面小胞体に付着している膜結合リボソームの二種類があるのですが、この二種類のリボソームがタンパク質の行先と大きく関わっています。

 細胞外に分泌されるホルモンのようなタンパク質の場合、一体どのようにして細胞の外に運ばれていくのでしょうか?その分泌経路は小胞体、ゴルジ体などを経由し少し複雑ですが、今回はまずその第一段階となる、リボソームで作り出されたタンパク質が小胞体に取り込まれる仕組みを見ていくことにしましょう。

タンパク質を小胞体に取り込むしくみ(『細胞の中の分子生物学(森和俊)』P121~123参照)

タンパク質を小胞体に取り込むしくみ
『理系総合のための生命科学:P139』より

 小胞体行きのタンパク質の場合、シグナル配列がまず翻訳されて、リボソームのトンネルから出てくると、細胞質で待ちかまえているシグナル識別粒子(SRP)がこのシグナル配列をめざとく見つけて結合します。

 その結合によって、リボソームのトンネルはちょうどふたをされる形となり、その後の翻訳が一時中断されます。

 このようにして翻訳が一時中断されている間に、リボソームとシグナル識別粒子の複合体は細胞質内をブラウン運動によって動きまわるのですが、その間に今度はシグナル識別粒子が小胞体膜上にあるシグナル識別粒子受容体(SRP受容体)に結合します。

 この結合によって、遊離リボソームは小胞膜に固定されて膜結合リボソームへと変身するのです。

 その後、リボソームのトンネルは、小胞体膜にあるトランスロコンというタンパク質でできた狭い穴とドッキングします。このドッキングによってシグナル識別粒子はリボソームから離れ、タンパク質の翻訳が再開されることになります。

 このようにして翻訳が再開されたひも状のタンパク質はするすると小胞体内に送り込まれていきます。

 翻訳されたタンパク質がすべて小胞体内に送り込まれるとシグナル識別粒子は切断されます。この切断されたシグナル粒子はその後再利用されることになり、小胞体に送り込まれたタンパク質はそこで立体構造を持つようになります。

巧妙にデザインされたシステム

 このような巧妙で合目的的なしくみが、偶然に出来上がったなどということが本当にあり得るでしょうか?シグナル配列、シグナル配列識別粒子、シグナル配列粒子受容体、トランスロコン・・・これらが皆、何らかの構想や計画、デザインなどといったものが全くない中で、それぞれが互いに全く無関係な状態で偶然に生じ、結果として見てみるとこのような巧みなシステムが出来上がっていたと言うのでしょうか?我々はそのような荒唐無稽な話を信じなければならないのでしょうか?

 そのうちの1つが欠けても成り立たないようなこのようなシステムが、漸進的な変化を通して自然選択によって出来上がったと考えることもできないでしょう。

 そこには明らかに「デザイン」が見えますよね!そうではないですか?

 「デザイン」という観点がなければ、このような事実を理性的に整理し納得することはできないのではないでしょうか。

 そうです。「デザイン」という視点から生物というものを見つめなおし、この世界を見つめなおし、ひいては我々自身の生き方までも見つめなおしてみる必要があるのです。


参考:タンパク質の細胞内輸送
https://www.youtube.com/watch?v=omceATAVYIw