ライオン③ 筋肉を生かした瞬発力、すぐれた動体視力ライオン
今回もライオンの体の特徴をさらに見ていきます。
前脚で強力なパンチ、視力は人間の5倍も
ライオンは狩りの時、最高速度60kmほどで走ることができます。筋肉を生かした瞬発力で獲物を襲い、前脚で強力なパンチをくりだし、首の骨、背中の骨を折り獲物を倒します。または、鼻面や喉に噛み付き窒息させて獲物を倒します。狩りに適した鋭い鉤爪を持っていますが、ネコのように自由に出し入れができます。
ライオンの視力はなんと人間の約5倍。1km以上離れた獲物すら見つけることができるのです。動体視力が優れており、逆に「動きの遅い獲物はスルーしてしまう」と言われることもあるほどです。基本的には夜行性の動物なので、当然暗闇での視力にも優れています。視力が良い反面、色の識別は苦手です。ライオンの見ている世界はほぼ白黒で、人間のように何色もの色を識別することはできません。
ライオンの視野の広さは、両眼視野が120度、単眼視野がそれぞれ80度(人は両眼視野が120度、単眼視野は90~100度)です。両眼視野とは、両眼で見ることのできる範囲のことで、この範囲ではものを立体的に見ることができ、遠近感がつかみやすくなります。ライオンを含め肉食動物は目が顔の前側についていることで両眼視野が広くなり、より獲物を捕まえることに特化した仕組みになっているのです。
目が顔の横についているシマウマは単眼視野が広いので、後ろから敵が来ても振り返ることなく気づくことができます。草食動物の目がもしも前についていたら、後が全く見えないので背後から襲われやすくなり、たちまち全種絶滅してしまうであろうことを思うと、後ろも見えて素早く逃げられるため、狩られる数が制限されるという、生態系を守るための自然の摂理は本当によくできていると思います。
ライオンはネコ科ですが、ネコの目と違ってその瞳孔は丸く、ネコのように縦に収縮することはありません。これは、丸形の瞳孔の方が獲物との距離をとらえるのにより適しているからだと言われています。
生まれて間もないライオンは目が開いておらず、少しずつまわりのものが見えるようになっていくにつれて、目の色が変わっていくそうです。最初はグレーがかった黒色をしており、とても愛らしい印象を与えるのですが、大きくなると金茶色へ変化し、だんだんと迫力を帯びてきます。
優れた聴覚と臭覚、牙は犬の10倍
ライオンは優れた聴覚を持っています。非常に広い周波数範囲を検出することができ、人間や犬よりも高い音を聞くことができます。その鋭い聴覚を、主に狩りのために使用します。
また、臭いに敏感で、臭覚でコミュニケーションをとります。同じネコ科のネコの臭覚は人間の1万~10万分の1程度の濃度の臭いまで感知することが出来るほど優れています。ライオンはネコと全く同じではありませんが、ライオンの感覚の中でも最も優れているのが臭覚だと言われています。ライオンは獲物を探すときには、まず臭覚によって臭いを嗅ぎ分けることから始めます。
基本的に肉食動物は肉や骨をかみ砕いたりするために全ての歯が鋭く尖っていますが、特にライオンの牙は大きく発達していて、平均的な長さは6cmといわれています。犬にくらべて10倍程の太さや長さがあるとされています。
吠え声と尿を撒くことで縄張りを主張しますが、吠え声はサバンナの5km先まで届きます。顎は突き出しておらず強力です。舌の表面にはおろし金のような角質の舌乳頭(ぜつにゅうとう)があり、肉をしっかり押さえたり、毛づくろいの際に寄生虫を取るのに役立ちます。
今回の最後は子育てについて説明します。
妊娠期間は体の大きさのわりに短く、98~114日(3~4ヶ月)です。そのため子どもは生まれた時はとても小さく、体長25~30cm、体重0.9~1.5kgほどで、成獣の体重の1%にも満たないです。
繁殖は年間を通して行われるので、一つのプライドのメス達が同じ月に出産することもあります。出産の子どもの数は1~6頭で、平均2~3頭です。
子どもは徐々に乳離れし、生後3ヶ月で肉を食べ始めますが、6ヶ月まではメスの4個の乳首から乳を飲み続けます。
餌が少ない時には子どもは育児放棄されることもあります。親の狩りの間は24時間放置されることもあるため、他の肉食獣に捕食されたりハゲワシやヘビに襲われることもあり、子どもの死亡率は高く、2歳になるまでに80%が死んでしまいます。
オスは生後4~6年、メスは3年で成獣になります。
オスは2~4歳で群れを去り、数頭のオスのグループを形成します。このグループはサバンナをさすらって、乗っ取れるプライドを探し回ります。プライドからオスを追い出そうとする戦いでは血が流されることもあります。
プライドを乗っ取った大抵のオスは、自分の血統を残すため前のリーダーの2歳にならない子どもを殺します。子殺しを行うオスに母ライオンはしばしば反発しますが、子どもを守ることに成功することはまれです。1頭のオスに対して3~4頭のメスが結束した場合には子どもを守れることもあります。
<引用資料>
● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「ライオン」
https://ja.wikipedia.org/wiki/ライオン
● ヘルシーヒアリング 聞こえの総合情報サイト
『動物の耳のしくみ。ざんねんじゃないいきものたちの聞こえ』
https://www.healthyhearing.jp/topics/topic-article-47
● ZOO CAN DREAM PROJECT「いきもの図鑑」
『ライオン』
http://www.zoocan.jp/zukan/index.cgi?98
● こどもeyeランド「目のずかん」
『動物の視野』
http://www.tsujimoto-ganka.com/kids/zukan2.html
● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「視野」
https://ja.wikipedia.org/wiki/視野
● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「色覚」
https://ja.wikipedia.org/wiki/色覚
● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「シマウマ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/シマウマ
● 「驚くべき世界の野生動物生態図鑑」日東書院本社(日本語版監修/小菅正夫監修、翻訳/黒輪 篤嗣)
● 「動物大百科1 食肉類」平凡社(編/D.W.マクドナルド、監修/今泉吉典)
● 「講談社の動く図鑑 move 動物」講談社(監修/山極寿一)
関連記事
ライオン④ 「設計された、創造された」という見方の方が自然
今までは具体的な特徴をたくさん見てきましたので、まとめていきたいと思います。 車 ...
ライオン① 百獣の王として親しまれてきたのに残念
ライオン(食肉目ネコ科ヒョウ属)は金色のたてがみを持ち、昔から百獣の王として人々 ...
ライオン② たてがみの仕組みには発見や感動
ライオンはたまたま偶然に進化した結果、体力がないざんねんないきものになったのでし ...
すごすぎるアリたちの話 ① 他のアリにどれいにされる残念な生き物?
クロヤマアリについて「ざんねんないきもの事典(高橋書店)」では次のように書かれて ...
ウシ② ウシの胃の中の微生物は、どこから来たのか?
ここで気になるのが、胃の微生物は、そもそもどの時点からウシの胃に存在するようにな ...
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません