ジャイアントパンダ③ パンダは木登りが得意!!

パンダは高い所に登るのが大好きな動物なので、木登りが得意で上手です。木の上で休憩したり寝ることさえしています。そのため木の上にいる姿をよく見かけます。

木に登る理由のひとつは、驚いたり不安になったりした時に、高い所に登って危険回避しようするためです。また求愛行動だったりもします。オスのパンダは高い木に登って、「こんな高い所も俺の縄張りなんだぞ!俺はこんなに大きいんだぞ!」とメスに一生懸命にアピールするのです。 野生では、とくに幼いパンダが天敵から身を守るために木に登る習性があり、生後5カ月頃には自力で登れるようになります。

木登り得意でも降りられない?!

あまり身軽には見えませんが、じつは木登りが得意です。かれらの手首は内側に少し曲がっていて、木にしがみつきやすくなっています。野生のパンダは、この手で器用に木を登り、ヒョウやジャッカルなどの肉食動物から身を守るのです。
ただ、おりるのはものすごく苦手なよう。動物園にいるパンダも、木の上から転げ落ちたり、つかんだ枝が折れて落下したりする様子がよく見られます。また木のてっぺんまでのぼったはいいけど、おりられずに、飼育員に救出されるパンダもいるのだとか。
「もっとざんねんないきもの事典(高橋書店)」P38

パンダはエネルギー消費をおさえるため、いつもノロノロ動きますが、木に登るときだけは、とてもすばやく動きます。

歩いている写真を見ると、前肢の手首が内側にまがり、かなり内股なのがわかります。この手首の形のおかげで、木登りするとき木につかまりやすくなっているのです。

木登りするパンダ
木登りするパンダ(引用: パンダの館へようこそ!
内股なパンダ
内股なパンダ – 手首に注目
(引用: UENO-PANDA.JP

パンダの身体は非常に柔らかくて、よく「クタクタ」と表現されます。特に足腰の関節はとても柔らかで、ネコのように前肢で顔を洗ったり耳をかいたりすることもあります。また後肢でも、体を丸めて器用に、後頭部をかいたりできます。

パンダは寝るのが好きで、ほとんどの時間仰向けや横向き、うつ伏せといった姿でゴロゴロしています。木の上でも寝ているので、木の枝に身を預けるときにこの柔らかい体はとても具合がいいのです。 身体のバランス取りの天才で素晴らしい柔軟性があるので、どんな格好でも寝られます。居心地の悪そうな所でもどんな場所でも、気持ち良さそうに熟睡しています。 時には、台から頭だけを垂らして頭に血がのぼりそうな格好でも寝ています。

木登りが得意なパンダですが、なぜか降りるのは苦手なようで、降りるというよりも落ちるといったほうがいいような格好で降りています。上野動物園のトントンが自分だけでは降りられなくなり、飼育スタッフが長いハシゴをもってきて下ろしたのは有名な話です。

登るのが得意なのに、なぜ降りるのが苦手なのかは未だによくわかっていません。パンダの分析からは未解明でも、視点を変えて、その意外性の驚きや、ぼてっと落ちる姿のかわいさが人間を笑顔にし、感動と喜びを生み出してくれているということから見ていくと、解決の糸口が見えてくるかもしれません。

じつはパンダはスペイン生まれ?!

人間よりもずっと昔から地球に存在しているパンダですが、人々の目に触れることはほとんどなく、長い間中国の山奥でひっそりと暮らしていました。その風変わりな姿を見た地元の猟師からは、シロクマや獏(バク)などと呼ばれており、正体不明の怪獣だと思われていたようです。また、神様が姿を変えて地上に降りてきた動物であると信じられており、神獣として扱われていました。

中国で発掘されたパンダ最古の化石が800万年前の中新世晩期のもので、同時代の動物が絶滅した中で生き残っているパンダは「生きている化石」といわれています。

1869年(明治2年)フランス人の博物学者アルマンド・デイビッド神父が、地元の猟師が持っていたパンダの毛皮を発見しました。デイビッドはその見たことのない珍獣の毛皮と骨を手に入れてパリの国立自然史博物館に送りました。博物館の科学者アルフォンス・ミラー・エドワーズが新種と鑑定して発表してから、パンダの存在が世界中に知れ渡るようになりました。

今は中国の一部にしか生息していないパンダですが、もともとの発祥はヨーロッパのようです。約1150万年〜1250万年前のジャイアントパンダ類とみられる最古の化石が、スペイン北東部のサラゴサ市近郊にある発掘現場で発見されて、ヨーロッパに暮らしていたクマ科の絶滅動物がパンダの祖先とみられていました。しかし後に発見されたあごの化石を比較分析した結果、独立した新属だと判明しました。

パンダは中新世前期のおよそ2000万年以上も前、クマ科の中で最初に枝分かれした可能性が高く、クマ科に属する一番原始的なグループ(ジャイアントパンダ亜科)です。かなり独特で他の熊たちとは異なる道筋をたどって今日に至っているといえます。 研究を主導したマドリードの国立自然科学博物館の古生物学者ホアン・アベジャ氏はパンダのふるさとは南西ヨーロッパの温暖湿潤地域だと話しています。それがどのようにして中国まで来て中国だけにしかいなくなったのか、これについても、まだ科学者は解明しきれておらず仮説の域を出ません。アベジャ氏は、熊は気候が温暖で湿潤な時に移住するので、1100万年前のヨーロッパ南西部が穏やかな気候で、移住を始めるのに適していたためパンダの先祖は陸づたいに旅したのだろうと考えています。

アイルラルクトスの想像図
アイルラルクトスの想像図(By Mauricio Antón – https://www.nature.com/articles/s41598-022-13402-y, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=121522090)

単独生活を好むパンダ

野生のパンダのメスは、近親交配を避けるためにオスよりも長い距離を移動して、繫殖期の3~5月にはオスとメスが一緒にいますが、それ以外はバラバラで行動をします。他のパンダとは交流せず単独で暮らし、家族では生活しません。単独を好むので子育てもメスだけでします。

授乳中の野生の母パンダは1歳になるころまでに離乳させ、その後の半年、母親が妊娠するまで一緒に暮らします。もし妊娠しなければ、そのまま2年間共にいて、最後は独り立ちさせます。

この期間に、どうやって食物や水を見つけるのか、どう天敵を避けるのか、病気にならないためにどうするのかなど、命を守る知識を学びます。それだけでなく、どのようにして交尾する相手を見つけるのか、どう親になり、パンダとしてどう生きていくのかなどの能力も、母パンダから学ぶのがこの1年半から2年の間なので、パンダの一生にとって重要な時期になります。

その間、母パンダはコドモに木登りなどを教え、子育てに専念します。その後、親離れした子パンダは単独生活に入り一人暮らし?をして昼間は眠り、夜になると食べ物を探すようになります。

しかし、飼育下では、母パンダの繁殖能力を回復させるために5か月ほどで断乳させ、コドモと母パンダを引き離します。そのためパンダの本来の能力が十分に目ざめず、成熟しても意欲が湧かなかったり、繫殖の方法がわからなかったりするそうです。


<引用資料>

● 毎日パンダ
  https://mainichi-panda.jp/

● パンダの館にようこそ
  http://pandanoyakata.seesaa.net/

● ガラパイア
 『ジャイアントパンダの起源は中国ではなくヨーロッパだった可能性(スペイン研究)』
  https://karapaia.com/archives/52110523.html

● WIRED.jp
 『パンダはスペインからやって来た!?』
  https://wired.jp/2012/12/12/giant-panda/

● アラチャイナ
 『パンダについて13の面白い事実』
  https://www.arachina.com/giant-panda/interesting-facts.htm

● 公益財団法人 アジア生命保険振興センター「中国レポート」
 『2012/09/14 Vol.9 パンダ(熊猫)』
  http://www.olis.or.jp/report_china.html

● UENO-PANDA.JP 「パンダ大百科」
 『Q14:ジャイアントパンダって木に登れるの?』
  https://www.ueno-panda.jp/dictionary/answer14.html

● 人民網
 『パンダは600万年前から竹を食用、「第六の指」の化石が証明』
  http://j.people.com.cn/n3/2022/0704/c95952-10118666.html

● 科学バー「進化の目で見る生き物たち」
 『第6話 クマ科の進化』
  https://kagakubar.com/creature/06.html