【1】ダーウィン理論の正体 『愛を尊ばない価値観』

 映画『鬼滅の刃』が空前のヒットを飛ばしていますが、人々の心をつかんでいるものは、鬼にされた妹を救うために鬼殺隊に入って命をかけて戦う主人公、炭治郎の兄妹愛。そして、鬼殺隊最強戦士の一人、煉獄も最後は鬼と壮絶な戦いを繰り広げて亡くなっていく中で、炭治郎に使命を託していく。弱き人たちを守るため若い命をささげていく姿が感動を呼んでいます。

 今はコロナ危機と経済危機の中で乾いた世情。そういう中で私たちが忘れがちな愛の尊さというものをリアルに実感させてくれているのではないでしょうか。

 愛の感動が広がって子供の世界だけでなく、大人の世界でもいじめ、差別が少しでも減る方向にいけばと願います。

 しかし、現実的に私たちの考え方には、愛を尊ばない価値観を強く促している力が働いています。それは科学のみならず、人類の文化文明を支配し続けている進化論なのです。

皇帝ペンギンの抱卵はざんねんな生き方?!

 例えば、日本で子供たちの間でベストセラーになっている本『ざんねんないきもの事典』。この本は進化論だけを前提にして多くの動物の生態などを描いていますが、皇帝ペンギンの解説には驚かされます。皇帝ペンギンのオスは南極のマイナス60度にもなる厳冬に、メスが産んだ卵を2か月もの間、抱いて温めます。この抱卵によって雛がかえるが、雛には口からペンギンミルクを出して育てるのです。

皇帝ペンギン

 映画にもなり、ユーチューブでも紹介されていますが、その姿は切ないほどの感動を与えてくれます。ペンギンの犠牲的な愛に感動するのです。皇帝ペンギンは私たちに感動をくれる素晴らしい動物でしょう。

 しかし、この本は皇帝ペンギンの生き方を「ざんねんな生き方」と決めつけています。どうしてざんねんなのか。「はじめに」を見ると、「この本では、進化の結果、なぜかちょっとざんねんな感じになってしまった生き物たちをご紹介します」とありますから、進化論が言うように、偶然、偶然で進化してきたから、こんな「ざんねんな生き方」をするようになったということなのです。

進化論に支配されると愛があるのに見えない

 さらに筆者の考え方はNHKの番組『チコちゃんに叱られる』の中ではっきりします。筆者はペンギンを含む鳥が抱卵するのは「愛ではない」と断言、親鳥が「自分の体が冷えて気持ちいいから」と説明するのです。(参考: https://inko.exp.jp/2019/08/24/post-9150/

 進化論の目で見ると、愛があるのに愛は見えないのです。

 この筆者だけがそういう見方をしているのではありません。なぜなら、進化論の見方「生存闘争」から出てくる結論は「弱肉強食」であり「利己主義」だから。愛は自分が忍耐したり、犠牲になったり損をしても相手のためになろうとするものであり、「弱肉強食」「利己主義」とは正反対の価値。愛は目に見えませんが、確実に存在します。

 物質(素粒子、原子、分子)とエネルギーだけで愛までも説明できるとしてきた進化論。ここに唯物論の限界を垣間見ることができますが、この誤った価値観が人類文明にどのように影響しているのか。

 科学のアプローチで進化論を検証し真実を探していく前に、いくつかの大きな問題ごとに考えていきたいと思います。