ジャイアントパンダ② 腹痛に悩まされている?!
ササを食べたり、木に登ったりと、いつも愛くるしい姿を見せてくれるパンダですが、実は、定期的に腹痛で苦しんでいるそうです。
そのときは、人間と同じようにおなかを抱えて丸まって動かなくなります。痛みの程度はパンダでないとわかりませんが、しばらくすると排便をして、何もなかったかのように普通の動きに戻ります。
2~3日で回復することもありますが、同じ症状を繰り返す場合があります。この定期的な腹痛の原因は一体何なのでしょうか?
痛みに耐えながらササを食べる
なぜ体に負担がかかるササを食べているのかは、まだ解けない謎ですが、もし肉をむしゃむしゃ食べているパンダなら、私たちはそれほどかわいさや感動を感じないと思います。座り込んで両手にタケやササをもって一心に食べる姿に、ほほえましさとかわいさを感じ、心が和むのです。
ただパンダは、繊維質が多くて硬いタケやササを主食とする結果、腸を保護している腸粘膜が傷ついてはがれるので、定期的に排せつして、また新しい腸粘膜を作らざるを得なくなってしまったのです。傷ついた古い粘膜は通常、便と一緒に白っぽい固まりとして排せつされますが、この腸粘膜のみの便を「粘膜便」といいます。
タケやササを食べる量が少なくなると便の量も減り、粘膜がうまく排せつされないことがあります。そうしたときに、腹痛のような症状が現れます。
タケやササの質が悪いとこの症状が繰り返されます。そのため、飼育環境下ではこのような時に、いつも以上に良質のタケやササを選んで与えることで排便しやすくしているそうです。
食生活に適応して変化した体
ジャイアントパンダ①で書いたように、パンダは繊維質の多いタケやササを食べる食生活をしているのに、肉食性のつよい雑食動物の消化機能しかもっていないので、消化できるのは食べた20%に過ぎません。
それを見るかぎり、パンダの消化器官はタケを食べる食生活に適応しているとは思えません。歯は草食獣とは大きく異なりますが、かといって犬歯は肉食獣のように鋭くはありません。犬歯と強力なあごでタケをバリバリ噛み割り、大きくて平たい臼歯でタケの皮をはぎ、かみつぶしてタケの細胞に含まれる栄養分を摂っています。とはいえその量はわずかなので、生きていくのに必要なだけのエネルギーを得るためには大量のタケを食べ続けるしかありません。
タケを食べているパンダを見ると、両手でタケをもっています。つまりタケをつかめるような手の形をしているということです。普通のクマのなかまは5本の指がすべて横一直線にならんでいて、人間のように指を合わせてものを「つかむ」という動作ができません。にもかかわらず、タケをつかめるということは、パンダの前肢はタケを食べる食生活に適応して変化するように設計された部位だといえます。
クマと同じで、パンダも指の数は前肢、後肢ともそれぞれ5本ずつです。ところが、パンダの前肢には5本の指に加えて、人間の親指の位置に近いところに肉球のような突起、6本目の指があることが1930年代に分かりました。 それは前肢の手首の骨(種子骨)が大きくなってできたこぶのような出っ張りで、この突起と本来の指ではさむようにして、タケの葉やタケをしっかりとにぎることができるのです。
「第六の指」を持つパンダ
私たち人間が、親指とほかの指で物をはさんでつかむのと同じような手の使い方ができるので、この突起を「パンダの親指」とか「第六の指」ということもあります。「第六の指」は、親指側の手首が盛り上がったものですが、1999年に東京大学の遠藤秀紀教授たちが、上野動物園の死んだフェイフェイの前足をCTスキャンしたことで、小指の側にも別の突起があることが分かりました。
小指側の下に副手根骨(ふくしゅこんこつ)の盛り上がりがあり、親指側の種子骨(しゅしこつ)と合わせた2つの突起によって、人間が手で物を持つように、タケをしっかりつかむことができるのです。
これによって、パンダの指は通常の5本に加え、親指側と小指側の2つの突起を合わせた7本指と考えられています。
パンダは何故かわいいの?
日本人はパンダが大好きです。パンダが好かれるのは何よりかわいいからでしょう。まず、頭が大きいこと。 ふつう、ほかの動物は成長とともに面長な顔立ちになります。胴や足も伸びて相対的に頭の比率が小さくなってくるのですが、パンダの場合は頭の比率が子どものときとほとんど変わらず一生「赤ちゃん体型」でいるところがかわいいのです。
また、顔を見ると目鼻が下のほうにグッと集まっています。写真のトラと比べるとパンダのおでこが広いことに気づくでしょう。
これは、堅いものをかみつぶすときあごを強力に動かす筋肉が頭蓋骨の上に付いているからです。消化しにくいタケを食べるために必要な筋肉があるおかげで、愛嬌があってかわいい顔立ちになっています。
体型を見ても身体全体が角のない丸型で、手足が短いので動きがぎこちなく、しぐさもかわいいです。バランスを崩して尻もちをついたり、木からぼてっと落ちたりと、どこか危なっかしい姿が赤ちゃんぽくてかわいく感じるのでしょう。「クタクタ」と表現される柔らかい身体はかわいいだけでなくで、木登りをするときにはとても役立ってもいます。
性格もおとなしくて、よほどのことがないと人間やほかの動物を襲ったりはしません。たいていは逃げて隠れてしまいます。人間に会うと、恥ずかしそうに頭を下げて前足で顔を隠したりします。本当にそう思ってやっているしぐさなのかは、パンダに聞かなければ分かりませんが、見ている方からは何とも言えずかわいらしくて、思わず笑顔になってしまいます。
<引用資料>
● オトナンサー
『硬いエサのせい? パンダが定期的に「腹痛」に悩んでいるって本当?』
https://otonanswer.jp/post/36554/
● UENO-PANDA.JP 「パンダ大百科」
『Q1:ジャイアントパンダは何本指ですか?』
https://www.ueno-panda.jp/dictionary/answer01.html
● 動物ネタペディア
『パンダには指が7本もあった』
http://animalpedia.blog.fc2.com/blog-entry-56.html
● ねとらぼ
『パンダの指は実は7本ある』
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1805/20/news013.html
● MDPI 第9巻 第5号
『飼育下のジャイアントパンダにおける粘液便の排泄とその年齢、性別および排便量との関連性に関する前向き研究』
https://www.mdpi.com/2076-2615/9/5/264
● UENO-PANDA.JP 「パンダ大百科」
『Q8:ジャイアントパンダはどうして可愛いらしく見えるの?』
https://www.ueno-panda.jp/dictionary/answer08.html
● いきふぉめ~しょん
『ジャイアントパンダってどんな生きもの?』
https://ikimall.ikimonopal.jp/blog/post-1423/
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