ジャイアントパンダ① パンダは肉食動物だった!?

パンダの語源は諸説ありますが、ネパール語で「竹を食べる者」を意味する「ニガリヤ・ボンヤ(ポニヤ)」だという説が有力です。

パンダ とは、食肉目に属するジャイアントパンダ(クマ科)とレッサーパンダ(レッサーパンダ科)の2種の総称です。ただし単にパンダといった場合にはふつうジャイアントパンダのことをいいます。

1821年に発見されたレッサーパンダは、1869年にジャイアントパンダが発見されるまでは唯一のパンダでした。そのため先に報告されたレッサーパンダを「パンダ」と呼んでいましたが、類縁関係にあるジャイアントパンダが見つかったことで、それまでのパンダが英語で『小さいパンダ』を意味する「レッサーパンダ」と改めて名づけられました。

ジャイアントパンダとレッサーパンダは食肉目に属していながら、ともに草食性になった種です。

パンダの食べ物の秘密

パンダといえば、ササの葉ばかり食べているイメージがありますが、じつはササは栄養が少なく消化しづらい食べ物。
もともとパンダはクマのなかまで雑食性のため、動物の肉や果物も食べられます。しかし、大昔にほかのクマなどに住む場所を追われ、ササくらいしか生えない高山でくらさなくてはならなくなりました。つまりパンダは生存競争に負けた結果、消化の悪いササを1日かけて大量に食べるハメになったといえるのです。
「ざんねんないきもの事典(高橋書店)」P129

パンダを見るといつもタケを持ってササを食べていますが、食肉目クマ科のパンダの先祖は肉を食べていました。それがいつどうして、栄養もなさそうなタケを選んで食べ始めて草食性になったのでしょう?

「ざんねんないきもの事典」にあるように、生存競争に負けた結果そうなったのでしょうか。生命力の強いもの、生存に適したものだけが生き残るというダーウィンの考え方が正しければ、自然界は生命力と繫殖力の強いものが支配する世界になっているはずですが、実際はそうなってはいません。強いかどうかでなく、互いに必要としあう秩序的関係で、あらゆる生き物を受け入れているのが自然界です。

天敵のいない安全な場所を求めて、中国の山岳地帯の奥地に移り住んだ結果、そこで年中たやすく手に入る食糧がタケやササだったということのようですが、どうしてタケを食べ始めたのか、その明確な答えはまだ出ていません。

笹を食べるパンダ

中国と米国の科学者の最近の化石の研究によると、パンダは少なくと肉食の猛獣です。 それで今でも消化器官は肉食動物の特徴を残しています。草食動物は食物繊維を分解発酵するために、腸内細菌が住み着いた大きな盲腸や複雑な胃を持っていて、腸の長さは体長の10倍から20倍もあります。しかしパンダは肉食動物特有の単純な消化器官しか持っておらず、腸の長さは、体長の4倍程度ととても短いのです。

繊維質を消化するためのセルロースという独特の酵素を持っているのがわかっていますが、それだけでは不十分で、食べたタケやササのうち約20%程度しか消化できません。100g の竹から わずか 17g しか栄養分を摂取できないそうです。対照的に、シカなどの草食動物 は、100g の草から 80g を栄養分として吸収できるのです。

パンダはほとんどがそのままフンとして排出されてしまうので、1日に体重の約40%ものタケを食べています。不足するエネルギーを補うのにたくさんの量を食べるので、野生のパンダは1日の半分以上の時間を食事に使わなければなりません。いつ見てもパンダは食べている姿が多いのはそのためです。

パンダはなぜ ぽっちゃり体形?

ジャイアントパンダは寒い所で生存するクマの仲間です。でもクマのように冬眠をすることはありません。冬眠は冬に食糧を確保できない動物たちの冬を越すための手段です。クマは冬眠する前にカロリーの高いドングリなどをたくさん食い貯めて、冬眠中は飲まず食わずで過ごします。ところがパンダは栄養価の低いタケやササが主食で、おまけに食べたほとんどが排せつされてしまうので、とても冬眠するだけのカロリーを貯めこむことは出来そうにありません。それに主食のタケやササは冬でも枯れず、一年中食べられるのでパンダは冬眠しなくても大丈夫なのです。

木の上でくつろぐパンダ

ジャイアントパンダは、栄養の少ないタケやササの葉が主なエサですが、体は丸くぽっちゃりしています。なぜカロリーの低いものを食べているのに体が大きくなるのでしょう。

冬眠しないパンダは一年中タケを食べているのですが、実は春から初夏にかけての4か月間は糖やタンパク質を豊富に含むタケノコを食べています。そして、タケノコの季節に体重が増えて脂肪を蓄えているのです。中国科学院などの研究で、それが腸内細菌の働きによるものだとわかってきました。それで研究者たちはパンダの体形は腸内細菌とのかかわりでできていると推測するようになりました。

季節によって食べるものが変わる動物は、腸内細菌の種類や量が食べるものに合わせて変化することが知られています。同じようにパンダもタケノコを食べる季節とササを食べる季節では、腸内細菌の種類と量が変化するのです。

それを確かめるため、研究者たちは野生のパンダのフンを無菌のマウスに移植して、パンダが食べているようなタケ類を3週間与え続ける実験をしました。その結果、与えたエサの量は同じなのに、タケノコを食べる季節のパンダのフンを移植したマウスは、ササの葉だけを食べる季節のフンを移植したマウスよりも成長が速く、体重が増え脂肪も多くなることがわかりました。また、タケノコを食べる季節の腸内細菌が作る酪酸という成分が、パンダの脂質の合成と貯蔵を増加させる脂質代謝の遺伝子を活性化させることもわかりました。

これによって、研究者たちはタケノコの季節の腸内細菌が、ササだけの季節の栄養不足を補っているので、パンダのぽっちゃり体形が保たれている可能性が高いと考えています。


<引用資料>

● フリー百科事典ウィキぺディア日本語版「パンダ」
  https://ja.wikipedia.org/wiki/パンダ

● UENO-PANDA.JP 「パンダ大百科」
 『Q3:ジャイアントパンダはどうして白黒なの?』
  https://www.ueno-panda.jp/dictionary/answer03.html

● NATURE & SCIENCE
 『ジャイアントパンダその意外な生態』
  https://nature-and-science.jp/panda/

● パックンパンダのブログ
 『パンダの白黒の割合は?』
  https://ameblo.jp/pakupakupandajp/entry-11804445220.html

● ねとらぼ 「パンダ沼へようこそ」
 『第1回 「パンダの白黒は黄金比に近い」「尻尾は白? 黒?」 パンダ沼の住人が語るパンダの魅力』
  https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2002/08/news002.html

● togetter
 『パンダの目の周りの黒いとこをなくしてみるとアイメイクの重要性がよく分かる「目元って大事」』
  https://togetter.com/li/1182221

● Yahoo!ニュース
 『パンダはどこからやって来たのか? 白黒模様の起源と進化の謎』
  https://news.yahoo.co.jp/articles/dd146f5e04b1674dcf4438ea765b292838af96d2

● 語源由来辞典
 『パンダ/panda』
  https://gogen-yurai.jp/panda/